4. 遠くない未來に想いを馳せて 

2016/09/11
お話のイメージは三浦大知さんの♪ Lullaby。
"何かに傷ついた心もいつかは癒える日がやってくる"
自分も含めて、優しく励ましてあげたい時に聴きたくなる曲です。

+ + + + +



「お。こんなとこにあったのか、これ」


よく晴れた秋の土曜日、俺は目的の物を探して一人和室の押入れを漁っていた。
天道家に同居するようになって三年とちょっと。
高校二年生の秋に一階の和室隣の個室を与えられてからは、特に用事がない限りそれまで親父やおふくろと過ごしていたこの部屋に入ることも殆どなくなっていた。
ちゃんと押入れの中の引出しに仕舞ってあったにも関わらず 微かにざらつく表面の埃を掌でさっと払う。
ちょっとしたお道具箱セットみてえな大きさのその箱はしっかりとした厚地の紙で出来ていて、白地の下箱に淡い桃色の上蓋を被せた作りになっている。

(懐かしいな…。最後に見たのは確か高一の終り頃だから、もう二年以上も前になんのか)

この箱を目にすると 直に心臓をぎゅっと鷲掴みされるような、当時の愚かな記憶が昨日のことのように蘇ってきて。らしくねえけど つい姿勢の一つも正してしまいそうだ。
かといって勿論かしこまった正座をするわけではないが、和室の真ん中で胡坐を組んで座り込んだ膝にその箱を抱えると、そっと上蓋に両手を添える。
そのまま、ゆっくりと上に引き上げようとした時だった。



「乱馬―?明日のお式用の服、見つかったー?」


部屋のすぐ手前で声がしたと思うと同時にすっと襖が開く。
慌てて膝の上の物を背中に隠したけれど、大きさが大きさだけに完全には隠し切れていなかったようで。目ざとくそれを見つけたあかねが軽く眉間にしわを寄せると当然のように聞いてくる。


「…なに隠したの?」
「別に。たいしたもんじゃねーよ」
「へー、そう」
「そうそう」
「……」
「……」
「……」
「……」
「見せ――」
「やだね」

あかねが言い終わらないうちに断固拒否する。
が、勿論それで「はい、そうですか」といくわけがない。


「なによ。あたしに見せられないようなモノなの?」
「別にそういうわけじゃねーけど――」
「じゃあいいじゃない」
「待て待てっ!おめーだって俺に見られたくねえモンの一つや二つあるだろ!?」
「あたしはそんな…特にないけど」
「ほー、そうか。んじゃ、俺が勝手にあかねの下着を見てもおめーは平気なんだな?」
「そ、そういう問題じゃないでしょ、ばかっ!大体、あたしはちゃんとあんたに断ってるじゃない」

あ―言えばこー言う。こんなところはいくつになっても相変わらずだ。
お互い、一歩も引かず睨み合う。
その均衡を崩したのはあかねの一言だった。



「……ふーんだ、エッチ」
「エッチってなんだよ。俺がエッチなら俺に付き合ってるおめーもエッチだろうが」
「ばっばか!大きな声で変なこと言わないでよ!」
「ふぁっふぇふぉふぇーが(だっておめーが)…」
「そういう意味じゃなくて!」

そういう意味じゃねーってなんだよ。エッチっつったら健全な男たるもの 普通はそーゆーコトを想像するもんだろ?
そんな俺の反論を許さないように見かけに寄らず強い力で口を塞がれ、思わず俺はバランスを崩す。
…と、その弾みで腰の後ろに着いた手の隙間から桃色の上品な箱が丸見えになってしまった。
その存在に視線をやりながら、あかねがいいことを思いついたというように口を開く。

「わかった。じゃあここでクイズです!その箱の中には何が入っているのでしょうか?いち、あたしには見せられないようなやらしーもの。に、あたしには見せられないラブレターの数々。さん、あたしには見せられない――」
「待てぃっ、それのどこがクイズだ!」
「なによー、せっかく人が和やかにクイズ形式にしてあげたのに」
「おめーなぁ…」

大体なんだよ、あかねに見せられねーようなやらしーモンやラブレターって。そもそもラブレターなんて取っとく趣味はねーし、いかがわしい本だって今のとこはもう無い。多分。
それにあったとしてもこんなかわいらしー箱にわざわざしまうかっての。
すると今度は何を思ったのか、急にわざとらしく目元を押さえるとあかねが白々しい演技を始めた。

「…そう、よくわかったわ。ごめんね、無理強いしちゃって。そうよね、あたしに見せたくないものの一つや二つ…ううん。十個や二十個 あんたならあるわよね。なのにごめんね、しつこくしちゃって」

そう言って大袈裟に目を伏せると、「さーて…今晩からあたしの部屋には鍵でも取り付けようかなぁ」なんて穏やかではないことをこれ見よがしに呟いている。
それは俺に禁欲で死ねって言ってるのか?なんて卑怯な奴だ!


「あーもうわかったよ。見せりゃ―いーんだろ、見せりゃ―」

どのみち今回は俺が折れることになるのはわかっていた俺は ポンとあかねとの間に箱を置く。

「見ていいの?」
「おめー、どの口が言ってんだよ…」

散々あれだけ脅しておきながら、いざ許されると途端にしおらしー態度を取りやがって。
今度こそ許さねえからな、と誓うものの、その誓いが守られたことは実は殆ど、無い。

「ま、こんな日に二人でこれを見るのも何かの縁かもしれねーしな。いーから開けてみようぜ」

そう言ってゆっくり蓋を開けた箱の中には、中に防虫剤を挟んだ白いタオルが敷き詰めてある。
その上で黄色いリボンに束ねられた長い黒髪が 今も変わらぬ艶のまま緩やかなカーブを描いていた。




「これって……」
「……俺と良牙が学校で闘って、おめーの髪…やらかしちまっただろ?だから、その…こうして取って置いたんでぃ」
「知らなかった……てっきり、学校で誰かが処分したのかと思ってたわ」

それってつまり、切り落とされた髪の毛がどうなったかなんて気にする暇もないくらいショックだったってことだろ?
わかっているつもりだったけど、こうしていざ振り返ると未だにぎゅっと胸の奥が苦しくなる。もう三年も前の話なのに…。
なんだか居たたまれなくなった俺はあかねと視線を合わせないまま、呟くように聞いてみた。

「…どーする、これ?」
「どうするって、そうねえ」

暫く考えるのかと思ったら間髪入れずにあかねが答える。

「捨てちゃっていいわよ、別に」

その表情も声も驚くほどあっけらかんとしていて、悲壮感みてーなもんはどこにもない。
俺のほうが拍子抜けして思わずあかねの顔を覗き込む。


「なによ?」
「なにって…おめー、何とも思わねえのかよ?」
「何ともって?」
「だ、だから……」
「だってずっと取って置いても使い道ないもの。あ、それとももしかしたら こういうのってカツラとかに出来るのかしら?」

っておい。それはもしや、親父のことをいじってんのか?
そんなことを頭の片隅で思いつつ、所在無く両手の指を付けたり離したりしながら 気付くと俺は当時 有耶無耶になったままの謝罪の言葉を口にしていた。



「あの時はその…悪かったな」
「なによ急に。あんたらしくない」
「んだよ。せっかく人が素直に謝ってんのによー」
「あらー、めずらしい。明日は雨が降るかもね…ってやだ、かすみおねえちゃんの結婚式なんだからやめてよね」


そう。
明日はかすみさんと東風先生の挙式の日だ。
晴れて永い想いを実らせた東風先生の元へ かすみさんが嫁いで行く。
あの頃はあかねの想いをわかってやれない先生がどっかで憎らしかったけど、よく考えてみたら先生も切ない片想いをしてたんだよな。しかもあかねとは比べ物になんねーくらい、何年も。
一方からの捉え方しか出来なかったガキの時は気付かなかったことも、時間と共に見えてくることもある。こういうのも少しは成長したっていうんだろうか。






…それにしても あの時。
あんな形で髪の毛が短くなんなかったら こいつはずっと髪を伸ばしていたんだろうか?
そして、断ち切れない東風先生への未練を胸に いつまでも引き摺っていたんだろうか……。



「きっと短くしてたわよ」
「へ?」

まるで俺の心を読んだかのようにあかねが言う。

「あの時言ったでしょ?どうせ短く切るつもりだったって」
「あ、ああ、そういえば…」

だけど、あの時はあかねが俺に強がって……
いや、違うな。

"切らなくちゃいけない"

そんな悲痛な思いに迫られてるみたいなモンを感じて、だからとてもじゃないけど「じゃー、いっか」なんて思えなくて…。



「なーにセンチメンタルになってるのよ。もしかして変なものでも食べた?」

自分のしでかしてしまった罪悪感にまた息苦しくなるのを見透かされてる。
そんな俺をこうやって いつもあかねはわかりやすく甘やかすんだ。

「別にセンチメンタルになんてなってねーよ」
「ふーんだ。めずらしく反省してこんな髪の毛まで取っといてくれちゃって」
「るせえな」
「…ちょっとね、感動しちゃった」
「あかね……」
「にしても、肝心の入れ物がお菓子の箱ってとこがいかにもあんたらしいわよね。どうせなら普通は桐の箱の一つでも用意するわよ?」
「仕方ねーだろー。金も無かったし、大体そんな桐の箱なんてわかんねーガキだったんだから」
「ふふっ。それもそうよね」

目を細めてあかねが笑うと、愛おしそうにその長い髪の毛をそっと指で撫でる。



「ね、乱馬はあの時 どう思った?」
「どう思ったって?」
「あたしの髪が短くなった時」
「そりゃー…やっぱ悪いことしたなーとか、おじさんに怒られるなーとか……」


思えばあの時、あかねは俺を責める言葉は一切発さなかった。
家族の前でも学校の友人の前でも、"切りたかったから切っただけ"。その一点張りで。
だから俺は非難めいたものを一つも受けることなく、助かった反面 いつまでも罪の意識が拭えないでいて…。
喉の奥がきゅっと締まるようなほろ苦さを感じながら、俺は逆に聞き返す。

「おめーは?あかねはどう思ったんだよ?」
「あたし?あたしはね、確かに突然のことでショックだったけど…」

だよな。
素直なあかねの吐露にズキ…と胸が痛む。




― と、

「でも 救われた」

予想外の言葉をあかねが口にした。


「あの頃のあたし、いつも怒ってばっかりだったもの。毎日怒って、毎日意地張って、きっとすごく疲れてた」
「……」
「それがね、もう無理しなくていいんだーと思ったら急に楽になっちゃって。ああ、もう意地を張って強がらなくてもいいんだなって…なんか許された気になったの」
「あかね…」
「ま、確かにあり得ない出来事だったけど 結果オーライってとこかしら?」

まるで俺を励ますようにあかねが笑う。



「…あかね」
「なによ?」
「"毎日怒って毎日意地張って"ってとこは 今もあんま変わってねーぞ?」
「もうっ!せっかく人がきれいにまとめようとしたのに そうやってまた怒らす!」
「ほれほれ、そういうとこ。ホントあかねはたんじゅ…素直だよなー」
「どうせ単純ですよーだ!」

拗ねて唇を尖らすあかねの腕を取る。
そのまま宥めるように俺の膝に座らせると、まだ抵抗をみせるあかねの額に唇を付けて大人しくさせて。…あの頃はこんなことも考えられなかったよな。
ようやく腕の中で大人しくなったあかねが俺の胸に頭を預けながら口を開いた。


「…でもね、本当にあの一件で想いが吹っ切れたの。吹っ切れたっていうか、想いを昇華してあげれたっていうか」
「…」
「それにね、どっかの誰かさんがうるさくて失恋の余韻に浸る間もなかったし?」
「うるさいどっかの誰かって誰だよ」
「え?あんた そんな理解力ないの?うるさくて無神経でデリカシーの欠片もない優柔不断って言ったらあんたしかいないじゃない」
「俺は皮肉を込めて聞いただけだ!しかもなんだよ、どさくさに紛れて悪口が増えてんじゃねーか!」
「あら、わかっちゃった?」

わかっちゃった?じゃねーよ。
こんな時ほど、そんなかわいい顔で楽しそうに笑うんだからな。この卑怯者。
ごつっとデコをぶつけると「いたーい!なにすんのよ!」と大袈裟に騒ぐけど、その瞳は優しく温かい。




と、不意に真面目な顔に戻ったあかねが俺の唇に一瞬のキスをする。
そして再び箱の中の髪の毛に視線を落とすと しみじみ呟いた。

「この髪の毛は切ない失恋の痛みを知ってるけど…」
「…」

「今あるあたしの髪の毛って、全部乱馬の知ってるあたしだね」なんてかわいいことを言うもんだから、つい抱きかかえる腕に力が入ってしまうのも無理はねえだろ?
そのまま あかねの肩に顔を埋める形で聞いてみた。


「おめーさ、もう髪の毛は伸ばさねーの?」
「なんで?」
「…なんとなく」

そう。多少の変化はあっても、あれからあかねの髪の毛が肩より下に掛かることはない。


「乱馬はどっちがいい?」
「へ?俺?」
「そう。長いのと短いのと、どっちがいいと思う?」

「前から聞いてみたかったの」と、何かを期待するようにワクワクした目で俺を見つめるあかね。
どっちがって、そんなの……

「…どっちでもいい」
「なによ それー!?」

おもむろにがっかりする声。
だってさ、どっちがいいかなんてそんなの 選べるわけねーだろ?
あの頃より ぐっと女らしくなったあかねはきっと長い髪だって似合うだろうし、けど今の短い髪の毛も爽やかなあかねのイメージでよく似合っている。
結局どんな髪型でもおれはあかねだったら全部好き…なんてことは、口が裂けても言えるわけない。



「あーあ。あの時は短い髪のあたしが好きって言ってくれたのになぁ」
「は?」
「言ったじゃない。短い髪が似合って、笑うとかわいいあかねが好きだよって」
「ま、待て!俺は短い方が好みとしか言っとらんわっ!」
「なによ、やっぱり覚えてるんじゃない」

し、しまった……。
形勢逆転というように、途端に胸の前でクスクス楽しそうな声が聞こえてくる。

「どうしよっかなー。伸ばすのもいいけど、やっぱり当分は短いままでもいいかな。誰かさんも短い方が好きみたいだし?」

赤くなった俺の顔をあかねが覗き込んで愉快そうにからかうと

「ま、本当は髪の毛を乾かすのも楽だからなんだけど」

乱馬は長くて大変よねーとおさげを引っ張りながら、自分の髪の毛と見比べている。

「ふん。色気のねー理由」
「色気なら他にあるからいいんだもん」
「へ?どこ?どこに色気があるんだ?ちょっと探してみねーと…」

そう言って柔らかい胸に手を伸ばしたらすかさず鉄拳が飛んでくる。
これもやっぱりお約束なわけで。




「さーてと。あんたが変な気を起こさないうちに あたしも明日の衣装を天日干ししてこよーっと」

あ、こいつ逃げる気だな。
素早く俺の腕を解くと、軽く両手を上げて伸びをする。
そのまま立ち上がろうと中腰になったあかねの背に向かって「んで?これ どーする?」と指差したのは、桃色の箱の中の長い髪。

「そうねえ…」

と、今度は暫し悩むと 明るい声で再びいいことを思いついたというように答える。

「やっぱりとっとこうかしら。さっきは使い道がないと思ったけど、将来 子どもが出来たら"パパにやられたのよー"ってあんたの非道っぷりを話すネタになるしね」
「んだよ それ!」

っていうか、それって…そういう意味だよな?
当の本人も俺の反応を見て発言の意味に気付いたのか、急に慌てて

「な、なんてね!とにかく、乱馬に任せるわ」

そう言ってそそくさと出て行こうとする。
この天然爆弾娘め。
勝手にこんな幸せな気分にさせておいて、このまま終わると思うなよ?


「あかね!」
「なに?」
「さっきの答えだけど」
「さっき?」
「髪の毛。長げ-のと短いのとどっちがいいかって聞いただろ?」
「う、うん」
「…しばらくは伸ばしてもいーんじゃねーの?」


祝言挙げる時まで、さ。

ぼそりと呟いた言葉はあかねに聞こえただろうか?
ちらりとあかねの方を向くと、耳まで真っ赤に染めてコクリと頷くその表情は きっとあかねが俺にしか見せない顔 ―。





(こいつが俺に笑いかけることなんてあるんだろうか?)


そう思っていた高校一年生のあの頃。
あれから沢山喧嘩もしたし、沢山怒らせて何度も泣かせたけれど、それでもあかねが俺の前で無機質な作り笑いを見せたことは一度もない。






(失恋の痛みを知ってる、か…)


菓子箱に入った長い髪をそっと指で梳く。
あの頃は上手い慰めの言葉の一つも言えない自分がすげー子供に思えて、とにかく早く大人になりたくて。当時は一つ年上ってだけでもすごく大人に思えて仕方なかったっけ。
東風先生と釣り合う十九歳のかすみさんが羨ましくてたまらなかった自分達が今、こうして同じ十九歳になっている。
何も変わらないと思っていても、確実にその月日を二人で積み重ねてきて今の俺達があるんだ。










結局、あの時交わした東風先生との勝負も有耶無耶になったままだ。
あれは確か、かすみさんとの婚約が決まった頃だったか。
ぶらりと訪れた骨つぎ屋の診察室で、向かい合って茶を飲みながら聞いてみたことがある。


「なあ 先生。前言ってた真剣勝負の件だけど」
「真剣勝負って…ああ、そういえば高校生の頃に言ってたね。それがどうしたんだい?」
「いや…先生、ちゃんと覚えてっかなーと思って」
「はは。忘れるわけはないよ」

ああやって面と向かって勝負を申し込まれたのは初めてだったしね、と懐かしそうに先生が微笑む。

「あれさ、どうする?」
「どうするって?」
「勝負だよ。どうすっかなーって…」
「迷ってるってことは もう答えが出てるんだね、乱馬くん」

僕もそれでいいと思うよ。
そう言うと、また何も言っていないのに茶のお替わりを注ぐ。

「それに僕も命は惜しいからね」

暗に"もう敵わないよ"とあっさり白旗を揚げると、全く悔しさを感じさせない…いや、それどころか嬉しそうにおれの顔を見て口元を綻ばすんだ。


「やっぱり僕の言ったとおりだったね」
「先生の言った通りって?」
「乱馬くんは強くなるって言っただろ?ちゃんと守りたい人が出来て君は強くなった。だから僕も嬉しいんだよ」
「…やっぱ先生、親父みてーだな」
「いやー、そろそろ年齢的にも笑えなくなってきたよ」

初めて先生が"参った"というように苦笑いを浮かべた。




あの頃はただ強くなりたくて。
自分よりも強そうな相手を見つけると がむしゃらに闘って追いつきたくて。
でも今の俺は違う。
試合でもねえのに むやみに拳を振りかざすことは幼稚なことだという分別を覚えた。
これも俺なりの成長なのだろうか。






(大人、か…)


憧れて憧れて 早く大人になりたくて仕方なかったあの頃。
今もその理想の大人になってるなんてことは到底言えないけれど。





(これからのあかねの人生 丸ごと受け止めるから、勘弁してくれよな)


心の中でそう呟きながら そっと髪に触れる。
今度この箱を開ける時は俺一人なのだろうか。それとも……。




そう遠くない未来を想像する。
そしていつかやってくるその日に少しだけ胸弾むと、また箱の蓋を閉めて再び押入れの奥に仕舞った。





< END >



♪ Lullaby / 三浦大知






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comment (2) @ Omnibus それぞれの初恋

   
5. あとがき  | 3. 恋の終りと始まり 

comment

きゅうー‼︎ : みにとど @-
良いですね〜素敵ですね〜>_<前の3話があっての、この4話目‼︎朝の連ドラ見てるみたいです。東風先生、親父みたいって‼︎その通り過ぎて笑えました。守る人ができたから手に入った強さ…kohさんならではのストーリーの持っていき方、さすがでした‼︎
続き…ありますよね⁉︎待ってまーす💕
2016/09/11 Sun 20:50:01 URL
Re: きゅうー‼︎ : koh @-
> みにとどさん

朝の連ドラwww
最高過ぎる褒め言葉です(笑)。
でも何となく この【それぞれの初恋】は爽やかな感じにしたくて。
読んでいただいた後に秋の空のように青く澄んだイメージ…とはいかなくても💦、
この後の二人の行方を応援したくなるような気持ちになっていただけたら嬉しいです♡

にしても東風先生、美味しいんですけど難しいんですよね~(苦笑い)。
そりゃ留美子先生もフェードアウトするわ…っていうか、留美子先生が東風先生を忘れてしまったから難しいのか。
でもまた、忘れた頃にひょっこり乱馬の良き相談役としてお話に登場してもらうかもしれません♡
いやはや、コメントをいただくと妄想が膨らみますね~(´艸`*)♪
ありがとうございます☆
2016/09/12 Mon 16:02:32 URL

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