男×煩悩=乙女の絶対領域・前編 (ニーハイの日) 

2016/11/28
こちらは一時的にpixivへ投稿していた作品です。
11月28日="いいニーハイの日"にちなんだお話になります。



【 男×煩悩=乙女の絶対領域 】



「あんた ちゃんと人の説明聞いてる!?」
「るせーな、聞いてるよ」
「もう!そのわりには さっきから全然ペンが進んでないじゃない」



窓から差し込むうららかな陽射しが心地よい穏やかな日曜日の午後、おれが不機嫌なのにはそれなりに訳がある。
一つは目の前のこいつ、憎き数学の問題集だ。
中学校からの復習問題だなんて言いつつ、やれ因数分解だ、やれ2次関数だと言われても正直なところ全くもってチンプンカンプンで。
大体さ、何度も言っているが格闘に学歴とやらは関係ねえ。
そう言うと決まってあかねは「格闘にも最低限の勉強と知識は必要よ。相手の技がどこから繰り出されるか、そんなのも攻撃と防御の角度が云々……」なんて始まるけど、そんなもんはっきり言ってクソくらえだ。
大体な?相手の攻撃が襲ってきた瞬間に紙とペンを取り出して「ちょっと待ってろ!今計算するから」なんつーバカがどこにいるんだよ。
こういうことを言うとまた「屁理屈!」と怒るんだろうけど 当の本人がそう思ってしまっている以上、あかねがどんなに頑張ってもおれが数学に興味を持つなど到底不可能なことのように思えてならなかった。

「それにね、格闘家って言ったって毎日毎日闘ってるわけじゃないのよ?練習の環境によっては海外に行くことだってあるかもしれないし、道場の設備やそれに伴う光熱費の経理だって必要じゃない。そんな時に"ああ、もっと英語や数学を頑張っておけばよかったな“って後悔しても遅いんだから」

まるで将来を漠然と夢見る小学生に説明するようにあかねが訥々と語り掛けてくるけれど、そんなもんおれの中では答えは決まっている。

"おれに足りない部分は結婚してあかねが補えばいいじゃねーか"。

……言わないけど。
ぜってー、言えるわけねーけど。




そして二つ目のおれが不機嫌な理由。
いや、もしかしたらこれが不機嫌の理由の殆どを占めているといっても過言じゃねーかもしれねえ。
それはせっかく他の家族全員が奇跡的に出払って留守にしているというのに、つれないあかねの態度だった。

あかねと名実ともに恋人同士の関係になってから もうすぐ四カ月。
最初のきっかけはやっぱり家族がいない夏休み、二人きりで留守番をしていたおれ達は気が付いたらそういうことになっていた。正確には気が付いたら…というより、おれはずっとそのチャンスを伺っていた気もするけれど。
自分の気持ちがとうに限界に達しているのを自覚しながら、家族の手前上 なんでもない素振りで誤魔化し続けた日々。それだけに、初めてあかねと肌を重ねた時は気持ち良さとか大人になった優越感とかはもちろん、とにかく嬉しくて嬉しくて完全におれのほうが舞い上がっていたと思う。

きっとこれからはこんな行為も自然であることのように許されて、二人の距離もどんどん近付いていくんだろうな…。

そんな淡い夢を抱いていたのに。
天道家にいる以上、その夢は決して簡単ではないことをおれは思い知る。


まず、何と言っても居住者の絶対人数が多過ぎる。
天道家五人に加えて居候のおれ達三人、計八人がひしめき合う家の中では二人きりになる機会は殆ど無い。
ましてや、親父達やおじさんは職場…いわゆる道場が自宅ゆえ、常に家の中にいるといっても過言ではなかったし、かすみさんもその多くの時間を一階の居間や台所で過ごしている。
それに加えて唐突に現われるのが八宝菜のじじいや良牙、更には迷惑極まりない三人娘の襲来だ。
こうして勉強という名の口実で夜遅くおれがあかねの部屋を訪れることがあっても すぐ隣の部屋にはなびきもいることだし、そんないつどこで誰が聞き耳を立てているか分からないような状況では おれはともかくあかねがそーゆう気持ちになれるわけはなくて。
せいぜい部屋を出る時に勇気を出して触れるだけのキスを一つ。そんな絵に描いたような健全な関係が続き、初めて結ばれた時を入れて数えても八月以降そういう行為をしたことはまだ四回しかない。
だからこそ、今朝 唐突に他の家族が夕飯まで留守にすると知った時は平静を装いながら、はんぺんの代わりに手拭いを口に入れるくらいには浮かれていた。
それなのに。


(はあ……こんな絶好のチャンスに、なんでよりによって数学の試験勉強なんだよ…)

そりゃまあ、あかねにしてみたら十日後にある期末テストに向けてその前に少しでもおれに数学の基本を叩き込んでおきたいという親心みたいなものなのだろう。だけど数学なんざ とうの昔に諦めているおれにとっては、勉強どころか二人並んでこの机に向かっていることからして不満でならない。
もっと言うと因数分解で公式を当てはめればスパッと割り切れる計算ならまだともかく 図形やグラフ、これに関してはアレルギー反応すら覚える始末だ。
何がxだ、何がyだよ。記号でしか示せねーようなもん、わざわざグラフ化する意味がわかんねー。
更に図形の中から閃きを持って体積や面積を求めるなんぞ、これが果たして格闘に何の意味があるのかさっぱり訳が分からない。

(せめてこう、もう少しわかり易くご褒美みてーなもんがあれば話は別なんだけどな)

おれは隣にいるあかねの姿にちらりと視線を走らせる。
休日ということでリラックスした様子のあかねは、白いモヘアのニットにグレーのチェックのプリーツスカート、それに黒いニーハイ…いわゆる膝より上までのソックス姿という出で立ちだ。
高校の制服が長めのスカートのせいか、家の中では短いスカートを履くことが多いあかね。
惜しみなくさらけ出した足もいいが、より足の形が強調されるニーハイ姿もすらりとしたあかねの長い足に良く似合っている。

(こんな女の子らしい格好しといて、何が悲しくて家の中に籠って勉強なんかせにゃならんのだ)

そりゃー確かに数学が苦手なのは事実だけど。
なんだったら あかねはともかく、おれの為に今日一日を勉強に充てているようなもんだけど。
けれど 何もよりによって、こんな日に勉強なんてしなくてもいーじゃねえか。
どうしてもおれの頭から拭えないのは、"家の中におれとあかねの二人きり"という この甘い響きを存分に含むシチュエーションだけ。
それなのに。

(あーあ。ずっと机に向かって座ってたら腰や背中まで痛くなってきやがった。こんなことなら いっそあかねの姿を見なくて済むように体を動かしがてら道場で汗でも流してーな……)

一生懸命説明してくれるあかねの声がまるで子守唄のようにすら感じる中で、不貞腐れながらぼんやりとそんなことを思う。

(いかんいかん。流石にここで眠っちまったらあかねにも申し訳ねーだろう)

いや、申し訳ねーっつーか その後に仲良く過ごせるかもしれねー僅かな望みをみすみす失うことが酷く恐いというか。
おれは眠気が襲ってくる頭を奮い起こすべく逡巡する。

(何か、何か勉強している感じで目が覚めるようなことは……)



もう一度あかねの姿を確認する。
白いニットの首元からは細い首が伸び、シャーペンの頭に下唇を乗っけるような仕草がかわいーな…。
ああ、おれもシャーペンになりてえ……じゃなくて。
えーっとえーっと。
そこでふと目に飛び込んできた光景。それは太腿の上に広がるスカートの裾とニーハイソックスの縁が絶妙な距離でせめぎ合う、光輝く生足の"絶対領域"だった。
さっきは気付かなかったが こうして座って椅子に押し付けられた太腿と、足を曲げる度 少しだけ肌色に透ける膝の部分が妙に生々しくて艶めかしい。
立っている時よりも上にずり上がったスカートの丈が、まるでおれを挑発しているようだ。
…それにしても。

"絶対領域"

これってすげー勢いのある言葉だよな。だって絶対の領域なんだぜ。
そう言われたら弥が上にも目を奪われちまう。いや、それこそ その絶対領域に踏み込み、出来ることなら突破してみたい。それが男ってもんだろう。


…よし、まずは頭の体操をするべく 小手調べに絶対領域の体積の計算だ。
楕円体を求めるとなるとおれの大っ嫌いなabcの記号に加えてSやらVまで出てきちまうから、ここは素直に円柱として考えよう。
この場合、太腿のなだらかなカーブと食い込みの段差はないものとする。
あかねの身長の平均的な太腿の周囲が48cmとして円周の長さ=直径×円周率だから48=x×3.14、
よってx=直径は約15.3㎝。
円柱の体積を求める公式は体積=底面積×高さ、すなわち半径×半径×円周率×高さだから、えーっと
7.65×7.65×π(パイ)×絶対領域(高さ)9㎝として その体積=526.7π(パイ)㎤……。

うんうん、どうせならこういう題材でおれは勉強したかったんだよな。
それにしてもこの526.7π㎤。
この体積の中に一体どれだけ男のロマンが詰まっているというのだろう。
白い肌に2mm程の食い込みを見せて留まるソックス、そこに唐突に現われた生足を拝めたと思うとその奥に続く魅惑の三角ゾーンを前にプリーツスカートの裾が厚き鉄扉の如く門を閉ざす…。
うーむ、これはなかなか手強そうだ。
と、そんな男のロマンにまで勝手に言及したおれは 何気なく目に入った壁掛けのカレンダーを見てある重大な事実に気付くことになる。


「…なあ。今日の日付って……」
「今日?今日は11月28日でしょ」
「……だよなあ」


11月28日。
11月28日。
いい ニーハイ……。


ま、まさかな。
だからってわけじゃねーよな。
あかねに限って、まさかそんな。
だけどこの偶然が、おれにしてみたらどうにも
「ニーハイ姿のあかねのこと、全部乱馬の好きにして下さい…」
そう言われているようにしか思えなくて。



い、いかんいかん、しっかりしろ!
思わず鼻の下が伸びそうになる己を戒めながら、おれは自分自身に言い聞かせる。
もっと別のことを考えるんだ!28日なんて毎月ある数字じゃないか。毎月あるってことは年に12回もあるんだぞ?
そう、何も特別なことはない。
もしかしたらニーハイじゃなくてフハフハかもしんねーし、ニヤニヤかもしんねーじゃねえか。
…ん?でも待てよ?
ニーハイでニヤニヤ……そ、それはそれで大いに問題があるような気もしてくる。
そんなどうでもいいことのように思えて 実は大切な日々の疑問に真摯に向き合いつつ、それでも真面目なおれは健全な思考に舵を取るべく己の考えを払拭しようと試みる。

そもそも 28をニーハイだなんて思うからやましい気持ちになってくるんだ。
バカだな おれ、もっと別の閃きを持てばいい話じゃねーか。
えーっと、28だろ?
28、
28、
2…8……。


…………。




……8の数字って丸が二つ重なってるんだな。
二つの丸。
二つの丸。
二つの丸いふくらみ。
二つの丸いふくらみ、すなわち数学風に言うと2×π(パイ)。
π(パイ)は2つでも、その魅力は∞大…。




多分、おれは頭の中の持論にうんうん頷いていたのだろう。
あかねが嬉しそうな声を出して「あら、やっとやる気になった?」と、ただでさえ一人用の狭い机の横からおれの顔を覗き込んでくる。今にも肘と肘が触れ合いそうな距離で、あかねの二の腕に押されてむぎゅりと寄せられる二つのふくらみ……。


…平面に対して180度、いわゆるお椀型のふくらみの体積(V)=4/3πr三乗÷2(半球)。
中心点をa…いや、この場合中心b地区、もといb地点と言ったほうがしっくりくるか?
とにかくbを中心に半球の体積求めようとすると……。

直に触った感触だとおれの手の平から中指までの長さ約19㎝に対して、まるで吸い付くようにぴったりと沿うあかねの乳。
ということはrを半径とした時、円の弧の長さが19=2rπ×180/360。
即ち円の半径はr=19/πとなるからr=19÷3.14、よって半径は約6.05である。
小数点以下を四捨五入し半径を6と仮定して求められた半球の体積は452.389。
但し なだらかな弧を描いていることから全てが体積とは考えにくいのでここから多少を省いたとしても、これは今後のおれとあかねの努力によって500台もすぐそこだと言ってもいいだろう。

どうだ?
我ながら ものすごく数学っぽい。いや、これこそ どこからどう見ても数学と言っていいのではないだろうか?
が しかし、そんな涙ぐましいおれの努力を嘲笑うように ここであかねが仕掛けてくる。



「乱馬ったら急にやる気を見せちゃってどうしたの?」

どうしたの?って、そりゃーまあ、あかねの喜ぶ顔が見たくって。

「でも珍しいわね。よりによって一番苦手な図形に興味を持つなんて」

そう言って机の前に乗り出すとともに 組んだ腕の間でぎゅっと寄せられる二つの乳。


…半球aと半球b、その頂点をそれぞれa’、b’と仮定して、二つの頂点は一定の感覚で近付いたり離れたりを繰り返す。一方、乱馬君の指は毎秒3秒ごとに直線に沿って1㎝ずつ頂点a’、b’へ近付こうとした時、これをズバリ公式に当てはめて式にすると……



やべえ。一体何を考えてるのか自分でもよく分からなくなってきた。
が、言えることはただ一つ。
はっきり言って、あかねに触れたい限界だ。

あかねの笑顔、横から見た二つのふくらみ、まるで誘惑するようにヒラヒラ舞うスカートとニーハイの絶対領域。それに気付いてしまった途端、あかねの"かわいい指数"と"おれの興奮"が比例すると共に急カーブならぬ急こう配となってグラフが上昇し、一方で"勤勉さ"が率直な思いを表すように反比例して急降下を示していく。これぞ、なんて見事な二次関数の完成と言えよう。



「…ちょっと休憩」
「ええ?せっかくやる気スイッチが入ったのに?」
「…」

あのな?確かにある種のヤル気スイッチは入ったが、とてもじゃねーけどそんな本音は言えなくて。
急速に熱が集中する下半身の疼きに気付かない振りをすれば、あかねの制止を振り切ってそのままベッドにダイブし身を任す。
大きく二度程バウンドし小刻みに身体を上下に揺らして身体が揺れる振動が、おれのグルグル巡る妄想と相まって妙に心地よかった。


「わかったわよ。じゃあ少し休憩にしましょうか。何か飲む?それとも甘いものがいい?」

遠慮なしにごろりとあかねの枕にうつぶせになるおれの隣で、ベッドの横からあかねが律儀に聞いてくる。俺の目線の高さはあかねの膝小僧、その足の隙間から見える台形の向こうの世界は別世界……。


「…甘いもんがいい」
「了解。じゃあ取ってくるからちょっと待って――」
「そーじゃねーよ」

そういうや否や、あかねの手首を掴むとその上半身ごとベッドの上に引きずり込む。
その反動のまま仰向けになったおれの胸にあかねの頭を捕らえると、有無を言わさず華奢な身体を抱き締めた。

「な、なにして…っ!危ないじゃないっ」
「わりーわりー」

本当は怪我の心配なんてしてないあかねと、ちっとも悪いとなんか思っていないおれ。
それでも互いの恥ずかしさを誤魔化すようにお決まりの台詞を吐けば、その後の言葉が思うように続かない。
ぎこちなく抱き合う中、おれの胸にそっと手を当ててあかねが静かに口を開いた。



「……すごい。ドキドキいってるね」
「なにが」
「乱馬の心臓」
「そりゃー生きてるからな」
「そういうのじゃなくて。なんかこう……」
「…」
「上手く言えないけど、すごくドキドキいってる気がする」

そう言ってぎゅっとおれのチャイナ服を握るあかね。その表情は見えねーけど、多分、きっと。
艶やかな髪を手の平で撫でたら一瞬ピクリと肩が動いた後、嬉しそうに胸に頬を寄せるのがわかった。


「あかね」

名前を呼ばれて頭を上げたあかねの顔が思いの外 近いことに気が付いて。
だけど今更後にも引けず目を逸らすのも決まり悪くてじっと見つめてみれば、今度はあかねのほうがやや戸惑った表情を見せる。

「な、なに…?」
「別に。ただ名前を呼んだだけだろ?」

んな頬を染めるようなことをしたつもりはねえ。
だけど。

「な、んか…」
「…」
「ち、近くて 照れちゃうわね…」

ぼそりと恥ずかしそうに呟いたその一言がトドメの様にかわいくて。
そのままごろりとあかねの身体ごと横向きに体勢を変えると、甘い蜜を求める蝶のように桜色の唇におれの唇を重ねた。



「…あかね、なんかリップ塗ってる?」
「あ、うん…薬用の……おかしい…?」
「おかしくはねーよ。なんかすげー…」

柔らかくて。

その言葉を呑み込むように、また触れるだけのキスをする。
なんだよ、さっきまであんなに勉強勉強言ってたくせに。
そんな上気した嬉しそうな顔で見つめられたら、なけなしの理性すら薄い木の葉のように吹き飛んでいきそうだ。
だけどあかねだってそうなんじゃねーのか?
いつになく素直にくっついているあかねの背中を撫でながら、やっぱり家族がいると落ち着かないのかもな、なんて女の心理が頭を過ぎる。


どのくらいそうしていただろう。
一人用の狭いベッドの上、あかねの身体が落ちないようにぎゅっと抱きしめていたら胸の中から急に現実的な声が聞こえてきた。

「あ、あのね、そろそろ勉強しないと…」
「…」
「ずっとこうしてたら、なんか……」
「…」
「ね、乱馬…?」
「…………こーしてたら、何だよ」
「え…?」

こういう雰囲気の時すら、流されないでちゃんと軌道修正しようとするその姿勢は立派だよな。
だけどおれと同じくらい、あかねだって熱を帯びているのは気のせいなんかじゃないはずだ。
そんな恥ずかしそうな顔して。
そんな名残惜しそうな顔して切り出されても、ちっとも説得力なんてねーっつーの。


「え…と……」
「言えよ。こーしてたら何だって?」
「だ、だから…っ」

見る見るうちにあかねの顔が情けない程 真っ赤になっていく。
なんとかこの場を切り抜けようとするあかねをそうはさせまいとがっちり掴んで、尚もおれは追及の手を緩めない。

「だ、だから、こうしてたら、なんか…」
「なんか?」
「た、確かにちょっと疲れたっていうか、その…」
「…」
「あ…だから、あの……べ、勉強するのが嫌になっちゃうわねって。ただ そう言いたかっただけっ」

もういいでしょ?まるでそう言うようにベッドから身を起こそうとするあかねの腕を再度引っ張ると、あかねが驚いた表情で掴まれた手首をまじまじと見つめている。


「勉強すんのに疲れたなら息抜きしよーぜ」
「え?ちょ、ちょっと…?」
「どーせ今このまま勉強しても何にも頭に入ってこない自信あるし」
「威張って言うことじゃないでしょうが」
「ご褒美がないともう頑張れねー」
「ご、ご褒美って……」

あのなぁ、十七歳の健全な男が求めるご褒美っつったら んなもん決まってるだろーが。
けれどその答えをあかねに託したら、きっと照れくささから今日中に正解に辿り着くことはあり得ない。
恥ずかしーけど。
おれだってそれなりに恥ずかしさみてーなもんはあるけど、でもそれ以上にもう限界で。
どう言っていいのかわかんねーまま、それでも震えそうになる声を堪えると あかねの耳元で囁いた。


「……あかねは、やだ?」
「な、にが……」
「おれと……そーゆーことすんの」
「…っ!」

あークソ、格好わりい。
ホントはもっとこう、スムーズに事に運びたいとこだがやっぱりそうはいかなくて。
もじ…と膝を擦り合わせるあかねの足をおれの足で挟み込むようにして捕らえると、もう一度切実な願いにも似た思いをあかねにぶつける。


「あかねが本気で嫌なら…やめるけど」
「…っ」
「……やだ?」


…多分、おれの心臓がバクバクいってんのもバレバレなんだろうな。
だけどそんなこと言ってらんねーくらいに 身も心もはち切れそうで。言葉の代わりにすり…とあかねのつむじに顔を擦り付ければ、顎の下から頼りねー声が聞こえてきた。



「……るい」
「え?」
「ずるいわよ。あ、あたしにそんなこと、決めさせるなんて…っ」
「あかね」
「…嫌い」
「あかね」
「もう乱馬、嫌い…っ」
「…うん」

嫌いでいーよ。
でもそれ以上におれがあかねのこと好きだから。
そう思うとなんだか必死な自分が滑稽に思えてきて情けなくなっちまうんだけど、おれの事を嫌いなはずのあかねの顔がかわいくて。
怒るでもなく笑うでもなく、ただひたすらに恥ずかしがるようなそんな表情、他のヤツらには絶対に見せらんねー。
そんな独占欲の塊みてーな想いをぶつけるように、手の平であかねの頬を包むとその唇を再び塞ぐ。

「…ん……っ」
「…っ」

…触れた指先からほんの少しだけあかねの身体が震えているのがわかった。それがこれからのことを受け入れる覚悟のように思えてならなくて。



「あかね…」


抵抗する様子を見せないあかねを安心させるように短い黒髪を指で梳きながら、おれはゆっくりと自分の下にあかねの身体を組み敷いた。





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