反則 (テレビ攻防戦・社会人編) 

2017/04/21
社会人編で焦点を当ててみたいと思い、ずっと温めていたお話です。
是非 拍手話と併せてお楽しみください。

+ + + + +



「ただいまー」
「あ、おかえりなさい。今日は遅かったわね」
「ああ……っておめー、こんな夜中に何やってんだよ?」
「見れば分かるでしょ。テレビ観てるの」


あのなぁ。
流石にそんくれーのこと、俺も見りゃ分かんだけど。


「なんで今頃こんなの観てんだよ」




そう。
あかねが釘付けになって観ている視線の先には、先週末に行われた某タイトルマッチの試合の模様が映し出されている。その画面の中では俺と対戦相手がリング上で組み合い、ちょうど俺が後ろから肘の関節を締め上げているところだった。


「ね、ここ何度観ても分かんないんだけど。一回あんたの手首をわざと取らせてそこから捻るわけ?」
「あー、そこは手首を取らせたと思わせといて拳を大きくしとくわけ。そうすると隙間が生じて逃げのスペースが……ってだからそーじゃなくて、なんで今頃これ観てるわけ?」
「だってあの日はお父さん達が大騒ぎするから集中して観れなかったし」


いかにもだな。


「それに あたしもやっぱり少しは緊張してたみたいだから今おさらいしてんの」



はい、と目の前に置かれるお茶。
「さんきゅ」と受け取り、口を付ける。




「っつーか、こんな結果の分かった試合なんか観て楽しいか?」
「そりゃ楽しいわよ。なんたって安心して観てられるし」
「なんだよ。もしかしてあかね、おれが勝負と名の付くもんで負けるとでも思ってんの?」


聞き捨てならねえと半ば意地悪く聞き返す。と、そこに予想外の言葉が返ってきた。



「別に試合結果は全然心配してないんだけど」
「ホントかよ」
「だって乱馬が負けるわけないもん」
「お、おう、」


なんだ?
ちょっと…いや、かなり嬉しーんですけど。



「あんたみたいに勝ちへの執念深い人、どんな手を使っても絶対勝つまで諦めなさそうじゃない」
「っておい。それじゃあ まるで俺が意地きたねえ勝ち方してるみてーじゃねえか」
「そうは言わないけど、まあ少なくとも簡単に負けるとは思ってないわね」
「あーそーかよ。んじゃ、勝つと分かってて他に何が心配なんでぃ」
「んー、たとえば 大きな怪我をしないかとか」
「え?」
「やっぱり試合だから何があるか分からないでしょ?」
「あ、ああ」
「だからね、選手生命に関わるような怪我をしませんように、って毎回心配しちゃうわけ」
「バカじゃねーの」


ほんと バカ。
帰って来たばっかの俺にいきなりそんなかわいーこと言うなんて。
こういうこと、不意打ちで言われると男は簡単にグラッときちまうもんなんだからな?

俺は声が上擦らないよう、また一口湯呑みの茶を口に含むと、視線を机の天板に落としたまま反論してみる。いわば照れ隠しってやつだ。


「大体 高校の時のほうが何でもありで無茶してたじゃねーか」
「本当よね」


あ、なんかまずい。
そうやって笑う顔すら いつもよりちょっとかわいく見えちまうから思ってるより重症かも。



「でも試合だと色々制限もあるじゃない?気弾もダメだし得意の空中戦ばかりっていうわけにもいかないし」
「まあなー」
「あんたの場合、先が読めない展開が多いから」
「バーカ。それを言うならバリエーション豊富と言え」
「だから思い掛けない事態にならないかって、試合が終了するまでハラハラするのよ」
「おかげで最後まで盛り上がっていーだろ?」
「はいはい。それが早乙女選手の魅力ですもんねー?」
「なんだよその言い方」
「別にぃ。あ、ほら。今あんたが関節決めた時、女の子達が喜んでたの見えた?」
「くだらねー。試合中にそんなのいちいち気にしてられっかよ」
「だからこうしてテレビで確認してるんじゃないの」


「ほら、ここ ここ!見えた?」だなんて画面を指でちょんちょん指差しては俺のほうを振り返る。
あのなー、んなピラピラしたスカートで四つん這いになってるのを目の前に、俺がテレビに集中出来るわけねーだろ?




「もーいーよ。試合ならその後ジムで何度も確認っつって観させられたし」
「いいじゃない。あんたはそうでもあたしは今観てるの」




っていうか。





「あのなあ。せっかく本人がいんだから テレビじゃなくてこっちのほう見れば?」





思わず本音が口から飛び出す。
と、一瞬キョトンとした表情を見せたあかねがフフッと表情を綻ばせ、さっきと同じ様に四つん這いのまま 今度は俺のほうに近付いて来た。
あーだから。そうやってると今度は胸の谷間が丸見えなんだって。
前門の虎、後門の狼……ってこれはちげーか。まあともかく、どちらにせよ目が離せねーってことだけは確かだな。
思わず目が釘付けになった胸元からなんとか視線を外し、素知らぬフリをする。
すると胡坐を組んだ俺の太腿にあかねが手を置き、俺の顔を覗き込むなり何やら愉快気に目を三日月の形にした。


「…ふーん」
「なんだよ」
「テレビの中の自分にまでヤキモチ妬いちゃうんだ。あんたってほんと分かり易いわね」
「何言ってんでい、ヤキモチ妬いてたのはおめーの方だろうが」
「あたし?あたしがいつヤキモチ妬いたっていうのよ」
「素直じゃねーなぁ。たった今、テレビを指差して他の女がどーたらこーたらっつって口尖らせてたのはどこのどいつでい」
「口なんか尖らせてないもん。あたしはただ、親切心でファンが喜んでくれて良かったですねって教えてあげただけよ?」
「だからそれがヤキモチっつーんだよ」


ほんと素直じゃねえ。
自分が今、どんな顔してテレビを観てたかなんてこいつは分かってねーんだろうな。
そしてその無自覚な振る舞いが密かに俺を喜ばせてることも きっとこいつは分かってない。
そんな俺の言葉に不満そうな顔をしながら、あかねがじっと俺の目を見つめてくる。




「ヤキモチとは違うわよ」



するりと首に回される手。
そしてギュッと自分の肩に俺の顔を引き寄せると、






「ただなんか。こうしてる乱馬とはちょっと別人みたいだなって思っただけ」




そう言って、おれの後ろ髪を細い指がゆっくり梳く。



するりと絹糸をすくように。
まるで楽器を弾くように 優しくあかねが俺の髪を撫でては甘やかす。
もしも俺がハープなら、その音はひどく穏やかな響きに違いないだろう。



……。


そっと力を抜いて頭の支えをあかねに預ける。
そして俺は ずっと疑問に思っていたことを口にした。



「…おめーさあ。一度くれー試合観に来ればいいのに」
「うん……そのうちね」
「そのうちっていつだよ」
「そのうちはそのうちよ」
「なんで?会場に来たくねーの?」
「そういうわけじゃないけど」
「じゃあなんで?」
「……」
「あかね」
「別に深い意味はないのよ。ただ…」
「ただ?」
「よく言うじゃない。試合を観に行くと、その……ほら、色々と」
「色々ってなんだよ。やっぱおめー、俺が簡単に負けると思ってんだろ」
「簡単に負けるとは思ってないけど」
「けど?」
「……、…もういいじゃない。そのうちちゃんと観に行くから、ね?」
「あかね」
「……」
「おーい」
「…、」
「ちゃんと言えって。怒んねーから」
「…言えって何を?」
「観に来たくねえ理由。ホントは何かあんだろ?」
「そんな…別に観に行くのが絶対嫌っていうわけじゃない、けど」
「“けど”ってことはやっぱ理由があるんだろーが。いーからこの際吐いちまえ」
「………………………、やだ」
「なんで」
「なんでも」
「だからなんで」
「だからなんでも」
「こん…の 強情、意地っ張りっ」
「悪かったわね。大体何よ、あんたこそ なんでそんな理由にこだわるの?」


なんでって……そんなの決まってる。
格闘はまさに俺の生きてる世界そのもので。確かに怖くて家族のファイトを直視出来ないなんつー話はよく聞くが、あかねに至ってはそれが理由とも思えない。
もっと別の何か。
その何かがずっとハッキリせず俺の中で消化しきれないまま、今まで曖昧に来てしまったのだ。



「あのな?俺は格闘が仕事だし、そん中でも試合は一番の要だと思ってる」
「うん」
「だから試合に関する分かんねーことは 分からねーままにしときたくねーんだ」
「…」
「それにあかねの考えもちゃんと知っときてえ。その…俺、そーゆーの言われねーと分かんねーし」
「乱馬…」
「怒んねーから」
「…ぁ、」
「あかね」
「…っ、……、」
「いーから言えって。絶対怒んねーから」



あかねの肩に擡(もたげ)げていた頭を上げる。
俺の視線の先には、揺れるあかねの黒い瞳。それを逃がさないように尚も俺はじっと見つめ、真正面から向き合った。
そんな俺の態度に、観念したようにあかねが目を逸らす。





「……………ウソ」
「あかね?」
「くだらねえって絶対怒るもん、乱馬」
「だから怒んねーっつってんの」
「怒る」
「怒んねえ」
「絶対怒る」
「あのなー。いつまでも強情で意地張ってる方が怒るぞ?」
「……」
「あかね…」


二人の間に流れる沈黙を埋めるようにテレビからは煩いまでの歓声が居間に響く。
そして漸(ようや)くあかねがぽつり、重い口を開いた。






「…………………………だって」





だって?










「男の人でも女の人でも……ファンは大事にしなくちゃいけない、じゃない?」







再びギュッと頭を引き寄せられる。
首に回された腕には力が入り、まるで今の顔を見るなというように。
だけど逆だ。多分、見られちゃマズいのは俺のほう。







「応援されてるのはすごく嬉しいの」
「ああ…」
「本当に…本当にありがたいなっていつも感謝してる」
「うん」
「乱馬がね、こうして格闘の世界で生き生きとしてるのを見る度に幸せだと思うし」





テレビ画面の中では勝利のゴングが鳴る中で俺の右腕が高々と持ち上げられている。
声援はもはや声ではなく轟音の様に会場を揺らし、あの日リング上から見た光景が蘇ってくるようだった。
やや呼吸を乱しながらインタビュアーの質問に応える俺。その一言一言に現場は大きな一つの波となり突き上げてくる興奮の前で、今 あかねが一人、肩を小さく震わせている。




「嬉しいっていう この気持ちに嘘はないの」
「ああ」
「…………だけど」
「……」




それ以上、決して口にしようとはしないあかねの背中を手の平でポンポン叩き、それから赤ちゃんをあやす様 ゆっくりと上下にさする。
あかねは何も言わない。
俺もそれ以上は何も聞かない。
ただ、互いに伝わる鼓動の音で気持ちを交わす。




この二年。
俺達を取り囲む環境は大きく変わった。


年々衰退していく国内での格闘の位置付けの中、若干二十一歳そこそこで格闘界デビューした純日本人である俺の活躍は良くも悪くも世間の注目を集めた。
幸いにも高校時代の知人の配慮と中国に渡った空白の時間が功を奏し、変身体質もひっくるめて謎に包まれた扱いになっている俺の過去。まあ 高校時代に関しては、俺はともかくあかねが妙なトラブルに巻き込まれない様にとの箝口令だそうだが、何にしても有難いことだった。
更には親父と過ごした修行という名の放浪も 俺の過去をカモフラージュする一端を担っている。
あんな行き当たりばったりのスチャラカな行動がここにきて大いに役立つことになろうとは、家族の誰もが予想出来なかった。

そんな俺を最初は面白半分で取り上げられていたメディアだったが、結果を残すにつれ それは徐々に過熱さを増していく。と同時に少なからず暴走する輩が出て来ることは仕方のないことなのだろうか。
マスコミ、ファン、人気商売、あかねの職種、家族への影響……
そして何より、あかねの身の安全の保障。
何はなくともそれを最優先とし、二人で何度も話し合った末に 俺とあかねの関係は未だ公にはしていない。

けれどそれはあかねを守るだけではなく、時に不安な思いをさせることにもなる諸刃の決断で。
普段は一切泣き言を言わないあかねの感情が、触れた場所から俺の心臓へ洪水のように流れ込んでくるような気がした。



互いに抱き合ったまま、静かな時間が過ぎる。
テレビに映し出される録画した試合は漸く勝者インタビューを終え、CMに切り替わったところだった。
いつもならば良くてせいぜい、深夜の誰も観ねえような時間帯にちょろっと放送される格闘の試合ダイジェスト。そんな中、俺が出る試合としては初めて生放送として取り上げられたのが今回のタイトルマッチだった。
とはいえ、勿論 出場選手は俺の他にも多数おり、一番のメインとなるゴールデンタイムには恐ろしく体格のいい外国人選手二人の重量級にスポットを当てた構成になっている。が、それでもこうしてテレビを通す試合で結果を収めることにより、今後 俺の認知度が跳ね上がることは明らかだろう。
そしてそれは、あかねも俺も痛いほど理解している。







「…………この一週間、ちょっと つらかったな」
「なんで?」
「…意地悪。わかってるくせに」
「わかんねーから聞いてんの。なぁ、なんで?」
「……」
「あかね。いーからここまで言ったんだったら最後まで言えって」
「……、」
「っつーか多分、今だったら何言われても怒んねー自信あるから」
「…」
「あかね」




ふわりと俺の髪の毛にあかねの息が掛かる。
何か言いづらいことを言う前、こうして大きく息を吐くのはあかねの癖だ。









「……だって」







また、“だって”かよ。











「…触…れられ、なかったから、」






その声が心なしか震えているような気がするのは 俺の自惚れだろうか。









「ごめんね」
「…なんで」
「だって。あたし…、」


言い訳するようにスカートの裾を押さえながら、あかねが俯く。



「あのなー…んなことでいちいち謝ってたら怒るぞ?」
「なによ、何言われても怒んないって言ったのは乱馬のほうじゃない」
「だからそうじゃねーだろ」






ったく こいつは。








「そんじゃ まるで俺があかねとそーゆーことだけしたいみてーじゃねーか」
「…違うの?」
「そ、それは、その、ある意味強くは否定出来ねーけど」
「ほらやっぱり、」
「けど流石に生理現象にまで文句を言うつもりはねーよ」




この一ヶ月余り ――。


今後の選手としての在り方を左右するといっても過言ではない、そんな覚悟で挑んだ今回のタイトルマッチ。その直前は極限まで己を研ぎ澄まし闘争心を高めるため、あかねと肌すら重ねていない。いや、それどころか物理的にもしばらく離れた環境に身を置き、そういった煩悩からは一切遮断をされた禁欲の日々を送ってきた。全ての行動はただ試合で勝利を収めることのみに照準が絞られ、その為に必要とされること以外は何もかもが排除される。

そうして一見華々しく思える舞台の裏側で時に血を吐くような努力を重ね、ようやくあかねの待つ自宅に帰宅するや否や タイミング悪く月のものが始まってしまったというわけだ。






「じゃあ あの時、乱馬は期待しなかった?」
「そりゃー、まあ、期待しなかった…つったら嘘になるかもしんねーけど…」
「……」
「でもアレが来なきゃ来ないでマズいだろーが」
「…そうなんだけど」
「あかね?」
「……………あたしはね、」
「うん」
「…ちょっと……………期待、してた…」
「…っ、」







え…っと。


俺、今日なんかしたっけ?
やっぱあれか?今朝湯呑みの中に立ってた茶柱。あれって迷信じゃなかったのかよ。
それともコンビニのお釣りがちょうど777円だったからとか?
とにかく、俺を抱き締めるあかねの口からこんならしからぬ発言が聞けるなんて、はっきり言ってこの一週間のつらさなんて帳消しだ。





「あか…、」
「…っ」


ふにゅ…、と柔らかいものが俺の唇に押し当てられる。
柔らかいだけではなく温かいそれ。
少し冷えた指先が頬から耳にかけて添えられ、思わず肩がビクリと跳ねた。





「あかね…」
「…、」



いつの間にか俺の足の間に身体をすっぽりと収めるようにあかねが座り、先程と同じ姿勢で再び唇を重ねてくる。
だけど二回目のキスは明らかに性質が違った。
ピッタリと重ね合わせた唇の隙間から薄い滑らかな舌が唇の表面をなぞり、僅かに開いた隙間からおずおずとそれを挿し入れてくる。



「…、」
「……ん、」



つうっと耳の裏を撫でる指。
その感触に堪らず息を止めれば、今度はわざと仕掛けてくる。
なんだよこれ。
いくら無差別級とはいえ、こんなの反則もいいとこだ。


二人だけの静かな居間にピチャ…と潤んだ音だけが聞こえ、また角度を変えて重なり合う唇と唇。
主導権を取ろうと腰に回した手にグッと力を込めれば、そうはさせまいとまた甘い刺激で俺の理性をかっさらっていく。
ぬるぬると絡み合う滑らかな互いの舌と舌。それだけで思考が蕩け、身体の奥がジンと熱を持った。
こんな行為だけでこうなっちまうなんてもしかしたら中学生レベルかもしれねーな。
そんな自虐的な恥ずかしささえ頭を過ぎるけど、こうなったらもう止めることなんか不可能で。
それでもここは いつ誰が来るかも分かんねえ明かりのついた居間だ。
俺は残された極僅かな理性を掻き集めると、ピタリと寄り添う華奢な肩を少しだけ押し返す。




「乱馬……?」



だから もう。
その淡く染まった頬も 潤んで光る唇も、目の前の全てが反則で。
負けることをこの世で一番良しとしない俺が、唯一白旗を上げる瞬間だ。

一瞬 言葉に詰まって見惚れる俺に、あかねが赤い舌をペロリと見せる。



「…やっぱり、テレビより実物の方がいいね」
「当たりめーだろ、バカ」
「こんな口を利かない分、テレビの方がいい男だけど」
「何言ってんだよ、テレビの中からだったらこんな事出来ねーだろーが」



“こんな事”を教えるように。
今度こそ俺からあかねの唇に触れると、嬉しそうに目を細める。
その表情も、やっぱ反則。






「……どーする?あかねの部屋行く?それとも、」
「…乱馬の部屋…が、いい」
「わかった」
「このまま抱っこね」
「はあ?そのくれーの距離歩けんだろうが」
「ダメ?」
「べ、別にダメじゃねーけど、」
「…」
「ただ、部屋に着くまで服を着させたままっつー保証はねえ」
「そこは我慢しなさいよ」
「さあ、どーかなー」
「バカ」
「いーから行こうぜ。時間がもったいねえ」




もう一度額に唇を押し付けると そのまま横抱きにして膝の裏に腕をくぐらせる。
こんな仕草もすっかり慣れたものだ。

と、



「テレビ、消さなきゃ」




俺に担がれたまま、あかねがリモコンに手を伸ばす。
音もなく消えた黒い画面に映るのは、あかねを抱きかかえてる俺とあかねの二人の姿だけ。






「不思議。さっきまでテレビの中で大勢の人に囲まれてたのに」
「まーな」
「……もう少しの辛抱よね」
「ああ、」





その言葉にこの先の未来と覚悟なんてもんを感じながら、二人して額を突き合わせ ふっと笑う。
多分…いや、絶対俺達なら大丈夫。
だってもう そこに言葉なんか要らねーから。




「ちゃんと掴まってろよ」
「うん」



もしかしたらあかねは抱き上げられた今の体勢のことだと思ってるかもしんねえな。
まあ、いずれにせよ俺があかねを離すわけはないから そんな心配無用なんだけど。




俺の代わりにあかねの細い指が壁際のスイッチを押す。
パチンという音で 居間に訪れる静かな夜。
その暗闇に二人の姿を隠すように、俺達はそっと部屋を後にした。









< END >





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comment (16) @ Omnibus テレビ編

   
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comment

大好きです! : 憂すけ @-
kohさん、大好きです!!kohさんも!このお話も!拍手話も!全てが、好きです!!
簡単じゃない感情が。事情が。
でも、伝えあいたい〝大好き”が。
その、甘さも。何もかもにノックアウトです!
沁みたぁ・・・グズグズに。・・・やっぱ、良いです!乱あ!!有難う!お陰様で今日も、全身、蕩けさせて頂きましたー!・・あぁ・・二次妄想って何て素晴らしい!kohさんの乱あは、いつでも2人がリアルに息づいていて、どっぷり浸かってしまいます!!はぁぁ~・・・素敵過ぎっす~!( *´艸`)
2017/04/21 Fri 10:30:47 URL
かわ(〃ω〃)ゆい : RA♪ @-
反則ーーーーーーーーっ‼︎‼︎
こんなにかわゆいあかねちゃんほんとに反則ーー(〃ω〃)♡
高校生の時と比べると落ち着いて安定してる2人が大人になったなあ〜と、でも未だにLOVELOVEなのが嬉しすぎ〜( ;∀;)♡
こうやって変化を楽しめるのもkohさんのお話だからですよね(*⁰▿⁰*)♪
今日も幸せな気持ちで過ごせます(*´꒳`*)♡♡♡
2017/04/21 Fri 12:56:46 URL
No title : ようこ @-
社会人編もいい(*´꒳`*)
禁欲からのさらに1週間禁欲だなんてかわいそうに(;o;)

ファンにありがたい気持ちもありながらもヤキモチ妬いてるあかねちゃんがなんて可愛らしいの(*≧∀≦*)

大人な2人にトキメキいただきました(〃艸〃)
2017/04/21 Fri 15:17:31 URL
管理人のみ閲覧できます : @
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2017/04/21 Fri 23:29:02
Re: 大好きです! : koh @-
憂すけさん

こんにちは。
ありがとうございます。自分で言うのも何ですが、私もこのお話は拍手共にとっても気に入っているんです。正確に言うと気に入っている…というより、ずっと書きたいと思っていて、でもなかなか形に出来ずにずっと温めていたお話だったので思い入れが強い、と言った方が正しいかもしれません。

高校生編では素直になれない感情に、大学生編は物理的な距離に、でも社会人編は二人の気持ちだけでは解決出来ない問題が出てくるんだろうなっていうのがずっと頭にあり。
きっと私の社会人編を読んでくださる方はそこまで重たいテーマを読みたいとは思っていないだろうな、と思いつつ、やっぱりここは触れとかなきゃと思ってテレビに関連付けてみたので好きと言っていただけてすごく嬉しいです(´艸`*)♡
2017/04/23 Sun 17:19:03 URL
Re: かわ(〃ω〃)ゆい : koh @-
RA♪さん

こんにちは。
今回はテレビにまつわるお話をオムニバス形式にしてみたので、各年代の変化を楽しんでいただけて嬉しいです♡
社会人編は精神的に充実しつつ、大人ならではの悩みを二人でクリアしていけたら楽しいなぁとこれまた妄想が尽きません(*‘ω‘ *)。
どピンクな社会人編も好きなんですが、精神的に抱擁し合うこんなお話も大好きなのでやっぱり社会人編もまだまだ書きたいっ!
(とはいえ今回は難しくてめずらしく難航したのですが…💦)
幸せな気持ちと言っていただいて嬉しいです。ありがとうございました♡
2017/04/23 Sun 17:24:33 URL
Re: No title : koh @-
ようこさん

こんにちは。
実際アスリートの方は大変ですよね。
特にファイターは三週間前から完全に制御するとか(あくまで個人差はありますが)食事制限とか、私もかつて格闘が大好きで観戦しては雑誌などを読んでいたのですが、本当に大変だなぁと(^▽^;)。
でもやっぱり乱馬にとって格闘はお仕事なんですよね。
それをいつかは書きたかったので、個人的に書けて楽しかった今回のお話なのです♡
(アスリートって芸能人とは少し違う分、割り切りも難しい部分があるんだろうな…なんて、昔 蝶野選手の奥様のお話を聞いて感じた部分も心情として込めています)
がっつりRじゃない社会人編、難しいけど書いていてすごく楽しかったです(*^^*)。
2017/04/23 Sun 17:31:46 URL
Re: タイトルなし : koh @-
2017/04/21 Fri 23:29:02 コメント主様

こんにちは。
Twitterでも図々しくちょろっと呟いていた通り、このお話はめずらしくかなり難航しまして。
何ていうか 頭にイメージがはっきりし過ぎている分、それをきちんと文章で表現できない自分の語彙力にガクッと来るみたいな感じで読み返す度に「うーん、なんか違う…」って修正を繰り返していました。
それだけに、何度も読み返していただき二人のしっとりと満たされていく心情を感じていただけてすごく嬉しいです♡

このお話や拍手では 二人の息遣いや重なる体温を感じ取っていただきたい。出来ることなら就寝前に読んで幸せな気持ちになっていただきたいと思っていたので、温かいコメントをいただいてとても励みになりました。
ありがとうございました✨。
2017/04/23 Sun 17:40:11 URL
No title : reina37894 @-
今日も良い夢を見れそうです、、、
ありがとうございます(о´∀`о)
遅ればせながら一周年おめでとうございます。
色々お忙しいとは思いますが、これからもまた更新楽しみにしています♬
2017/04/24 Mon 00:13:10 URL
Re: No title : koh @-
reina37891さん

おはようございます。
えへへ…いい夢は見れたでしょうか?
私は綾野剛が主人になる夢を見て最高に幸せな気持ちで目覚め、隣にいる現実を直視して思わず不貞寝しそうになりました…orz。
そう。一周年、迎えちゃいました。
これもHPに遊びに来てくださる方々のおかげです✨。ありがとうございます♡
Reina37891さんもきっと毎朝のお弁当作りなど忙しい春のスタートをきっていると思いますが、時には息抜きがてら またのんびりとお付き合いください(*^^*)♪
2017/04/24 Mon 10:09:00 URL
只今参上(≧∇≦) : ひなた @-
やっとやっと見にこれたぁ~✨第二弾!
師匠ご無沙汰しております!
現実生活が忙し過ぎてなかなか見にこれなかッた自分にかなりご褒美のこのお話(T^T)✨
このお話かなり好きですぅ!!自分が社会人で読みたかったお話でした。あかねちんや乱馬のその後のお話を書いてくださって本当に読めて嬉かった✨
癒されました……(ノ_・,)
明日は久しぶりにオーフ❗久しぶりに読み漁ります!
あーん💦ありがとうございましたぁ!!
コメントらしくないコメントですみません!
2017/04/26 Wed 18:58:35 URL
久しぶりにお邪魔してます^_^ : クリ @-
kohさん、こんばんは。
一周年おめでとうございます!!\(^o^)/
忙しかったり余裕がなかったりなどなどで、なかなかお邪魔できてませんでしたが、久々にのぞかせていただいて、変わらず存在してくれていることに感謝です!
桜のお話もわ〜って読ませていただいたんですが、
世代別オムニバス、社会人編!みなさんもおっしゃってますが、とてもとても好きです!
特にあかねちゃんが自分の欲求に素直なこととか、
直接的な表現はないけど、肌の温度を感じさせるお話の内容とか、
歯がゆい思いとか…何度も読み返しさせていただきました♪
世代別オムニバスといえば、お祭りのお話もとてもとても好きで、
今回のテレビ!(笑)待ってましたー!という感じです(^^♪
ああ〜素敵なお話ありがとうございます!
2017/04/26 Wed 19:54:32 URL
Re: 只今参上(≧∇≦) : koh @-
ひなたさん

こんにちは。
四月はなんだかバタバタしますよねぇ(>_<)💦。
私も「去年はどうやって書いてたんだ?」というくらい、なんだかまとまった時間が取れずに毎日わさわさして気が付いたら疲れて爆睡する始末。←老化とは認めない

そんな中、社会人編にしてはめずらしく難産中の難産として書いたこちらのお話。
頭にあるイメージが強すぎて逆に形に出来ずに難航したのですが、好きと言っていただけて嬉しいです♡
どんな立場になっても悩みや葛藤は形を変えて続いていくのかな、と。でも互いに関して無関心ではいられないからこそだと思うので、それもまた二人の成長なのかな、と思っています。
直接的じゃないRの雰囲気のお話ってすごく難しいと痛感したのですが、だからこそ思い入れの強いお話になりました(´艸`*)♡
2017/04/28 Fri 13:10:43 URL
Re: 久しぶりにお邪魔してます^_^ : koh @-
クリさん

こんにちは。
お忙しい中、コメント頂き感激です✨。
今年から仕事の体制を変えたので全ほどのペースでは創作が難しいのですが、それでも妄想だけは相変わらずでのんびり続けています♡

> 世代別オムニバス、社会人編!みなさんもおっしゃってますが、とてもとても好きです!

世代別オムニバス、そう言っていただけて嬉しいです。
思えば初めてのオムニバス形式【揺れる金魚】に貴重なリクエストをくださったのもクリさんでしたものね(*^^*)。
今回は高校生編・大学生編のオチがお決まり過ぎではあったのですが、この社会人編を締めに書きたかったので個人的にとても楽しくて。
一つのテーマでもその年代によって捉え方が違うなぁと思うと、それだけでまたお腹いっぱい妄想できる私なのです 笑。
また気が向いた時にぽこんとオムニバスも書いていくと思いますので、よろしければ息抜きに遊びに来てくださいね♪
2017/04/28 Fri 13:11:31 URL
管理人のみ閲覧できます : @
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2018/11/02 Fri 09:12:08
Re: こんにちは。 : koh @-
Y~コメント主様

コメントありがとうございます。
これを機に私もおそるおそる読み返してみました…////。も、もうなんというか、恥ずかしいのか面白いのか、でも自分の萌え自体は変わっていないので文章だけを書き直したくなる衝動と闘いながらもニヤニヤしてしまいました…笑。
乱馬の場合、たとえ何歳になってもどこかに子どもっぽさは残っていて欲しいなぁと。人間そうそう変われるものではないですし、あの飄々としつつムキになりやすいところが感じが魅力でもありますもんね。
一方であかねちゃんもあっさりあしらっているように見えつつ、ヤキモチ妬きなところは変わらないでいて欲しくて。
昔は茶化すことで照れを隠していた二人。そんな王道の二人も大好きなのですが、大人になって精神的にも余裕の出来た二人を想像するのもまた楽しかったりします。これぞ、オムニバスならではですね^^。
昔懐かしい作品でお恥ずかしい限りなのですが、こうして読んで感想をいただけることがとても嬉しいです。
いつもご丁寧にありがとうございます♡
2018/11/02 Fri 23:40:37 URL

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