きみのおさげ 

2017/05/05
Twitterをご覧の方はご存知かもしれませんが、とても初々しいイラストから広げた妄想小話となります
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【 きみからのチュウ 】



「おい、あかね!おめー、おれに何か言うことねーのかよっ」


あかねの部屋の扉を開けるや否や、開口一番におれは憮然と問い質す。
それにキィ…と椅子を半回転させて振り向くのは「騒々しいわねえ」とでも言いたげなあかねの表情だった。



「言うことって?」
「だからっ。さっき じじいの魔の手から助けてやっただろーが」
「別に助けてなんて言ってないもん」
「またおめーはそーいうかわいくねーことを言う。いいか?おれが助けなきゃ今頃あかねのその小せー胸を見られちまってたかもしんねーんだぞ!?」
「小さいは余計よっ!大体あたし一人でもおじいさんくらい やっつけられたもの」



よく言うぜ。
たまたまおれが駆け付けたから良かったものの、手で身体を隠した状態でどーやってあのじじいとやりあおうってんでぃ。
大体なあ、あかねは隠してるつもりかもしんねーけど細い腕の間から乳の谷間やら下着やらがチラチラと覗いて見えて、それはそれで悪くねーっつーか、寧ろ想像力を掻き立てられるっつーか、時には夜おれが大変なことになっちまうんだぞなんてこと、こいつは想像もしねーんだろうな。
(まあ、想像されたらそれはそれですげー困るんだけど。)


そんなおれの助言と不埒な妄想など知ったこっちゃねーというように、あかねは尚もキャンキャン喚いている。
これでどちらかがすっと折れてやればいいのだろうが、あいにくおれもあかねも負けん気の強さではいい勝負だからそうはいかず。
段々とヒートアップしながら、言い争いは益々激しさを増していく。
売り言葉に買い言葉。まさにそんな感じだ。
おれがあかねのことを「ニブい」と言やあ、すかさずあかねが「ニブくない」と反論する。
そこにおれはまたニヤリと笑ってみせ、挑発するように畳み掛けた。


「へっ、どーだかな。おめーみてーなニブい女に何が出来るってんでぃ」
「言ったわねっ!?」
「おー、ニブいっつったらどうするってんだよ」
「…っ、」




眉を寄せたあかねが立ち上がり、みしり…とカーペットを敷いた床がしなる。
唇を尖らせ、悔しそうな表情で近付いてくるのはもしかしていつもの空への旅パターンだろうか?
咄嗟に構える防御の姿勢。そして威嚇するよう、あかねの方に身体ごと向き合った。





「な、なんだよ!い、言っとくけどな、おめーにやられるほど おれは――!」








ぐいっと。





力任せにおさげを引っ張られ、寄せた頬に一瞬触れたのは 他でもないあかねの唇…。











「…どう?これでもニブい?」




不意を突かれたおれの耳に、頭の下から小さな声が聞こえてハッと我に帰る。



「い、いや、そ、その、」
「……」
「えっと、あの、ニブく、ないです」
「…へへ」




あ、その顔。
んなかわいい顔してちょっと恥ずかしそうに笑うなんて反則だろー!?
あかねといったら いかにも“してやったり”の表情を浮かべながら、クルリと背を向けると何事もなかったかのように再び机の前の椅子に腰を下ろした。
なんだよ。これじゃー、まるでおればっか浮かれてるみてーじゃねえか。



「あ、あかね?」
「なに?」
「え…と、そ、その、…なんで?」
「…別にぃ」
「べ、別にって…っ」
「あたしのことニブいって言う前に あんたも人の気持ちにもう少し敏感になったらどう?」
「な、何だよその言い方!まるでおれが人の気持ちに鈍感みてーじゃねえかっ!」
「みたいじゃなくてそうなのよ」
「だーっ!かわいくねーなっ」
「はいはい、かわいくない女で悪かったわね。いいから勉強中だし出て行って」
「その態度もかわいくねーぞっ!」
「…さてと。今日の乱馬は自力で宿題をする、と」
「き、きたねえな!」
「どっちがよ」
「……一時間。一時間後、もう一回宿題写しに来るからなっ!」
「あのねー。なんで宿題写すあんたがそんな偉そうなのよ」
「うるせーっ!と、とにかくその、そ、そ―いうことだからっ」
「ちょっと…っ」
「後でまた来るからなっ!覚えてろよっ」



自分でもなんて態度だと思いつつ、勢いだけであかねの部屋を後にする。
その扉を閉めた途端、足元から力が抜けてそのまま背中をもたれさせるようにズルズルとしゃがみ込んで押さえたのは、先程あかねの唇が触れた頬…。




「何なんだよ、一体……」



思い出すのは一瞬の柔らかさと、それからふわりと香り立つ甘い匂い。









(おれ、一時間後に冷静でいられっかな…)



くしゃりと前髪に指を突っ込み、先程の出来事が夢ではなかったと確認するように何度もその余韻を振り返る。
そんな乱馬の葛藤を余所に、「おじいさんから守ってくれたお礼よ」と舌を出すあかねの台詞など、互いに知る由もなかった。






< END >




  きみからのチュウ85

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【 きみへのチュウ 】



「おい、あかね!おめー、おれに何か言うことねーのかよっ」


乱暴にドアを開けるなり、鼻息荒く大きな声を上げるのはこの家で一人しかいない。
その聞き慣れ過ぎた声の主を確認するまでもないのだが、一応礼儀としてあたしは椅子を半回転させるとそちらを振り向く。



「言うことって?」
「だからっ。さっき じじいの魔の手から助けてやっただろーが」
「別に助けてなんて言ってないもん」
「またおめーはそーいうかわいくねーことを言う。いいか?おれが助けなきゃ今頃あかねのその小せー胸を見られちまってたかもしんねーんだぞ!?」



…って。あのねえ。
言っときますけど あたしにだって言い分があるんですからね!

おじいさんが着替え中のあたしの部屋に飛び込んできたあの時。
確かに乱馬はおじいさんより一瞬先に部屋に入るや否や、あたしとおじいさんの間に入ってガードしてくれたわよ?それはそれで感謝してるの。本当に。

だけどね。

あの時、一瞬だけど乱馬の目があたしの胸元をしっかりと捉えてたこと、あたしが気付いてないとでも思ってるのかしら。
そりゃ確かに一瞬ではあったけど。慌てて黄色いカットソーで隠しはしたけど、なんてったって自分の部屋での着替えだもの。
何もこそこそする必要はないし、それこそ下着全開で着替えていたわけで。


(良かった、今日お気に入りの下着をつけてて)


なんてどこかズレた感想を慌てて追い払っているうちに、気付けば二人の姿はあたしの部屋から消えていた。
まったく、突然やってきては大騒ぎしていなくなって、一体どこの迷惑台風か。
おかげで恥ずかしさに叫ぶ間もなく、胸の前を隠したあたしは半裸のまま座り込むと 今度こそ警戒しながらスポッとカットソーを頭から被る。
そこにさっきの乱馬の台詞だ。
しっかり人の胸を拝んでおきながら、「小さい」とは何事よ。
そ、そりゃ乱馬に比べたら確かにちょっと見劣りしちゃうかもしれないけれど、大きければいいってわけじゃないんだからねっ。あたしだって日々の努力の甲斐あって少しずつ成長してるし、それにこの前、体育の着替えの時にさゆりが言ってくれたもの。


『あかねの胸って白くてふっくら桃みたい。乱馬くんが喜びそうよねー』って。


その時は「な、何言ってるのよっ!」なんて思わず突き飛ばしてしまい、後からジュースを奢らされる羽目になったけれど、乱馬が喜びそうと聞いて一瞬浮かれてしまったのもこれまた事実で。
慌てて「なに考えてるのよ!これじゃあ乱馬に胸を見せるみたいじゃないっ!」と頬っぺたをバチバチ叩いてみるものの、少しだけ。ほんの少しだけ意識してしまったのはあたしだけの秘密だ。
そんな乙女心など露ほども知らず、尚も乱馬は勝手に続ける。


「大体あかねはニブいんだよ」
「なんですって?」
「んな無防備に着替えやがって。うっかり誰かに見られたらどうするつもりでぃ」


それはあんたのことでしょうがっ!
自覚のない自己紹介に、思わずあたしは深い溜め息をついた。


「あのねえ、自分の部屋で着替えるのになんで無防備だなんて言われなくちゃならないのよ」
「着替えるならちゃんと窓の鍵とカーテンも閉めろっつーの!この前だっておれが覗いたら――」
「え?」
「や、な、なんでもねえっ。と、とにかくだな、おめーはニブいんだからもうちっと自覚を持て」
「さっきから聞いてれば人のことニブいニブいって失礼ね!」
「ニブイからニブいっつって何がわりーんでい」
「あ、そうっ!じゃあ あんたはそんな偉そうに人のこと言えるわけっ!?」
「あったりめーだろーが。おれはおめーと違って隙がねーからな」
「よく言うわ。そんなこと言ってるといつかギャフンという目に合うんだから」
「ほー。参考までに聞きてーなぁ。おれ様が誰にギャフンと言わせられるっつーんだよ」
「そうね。たとえば、あたしとか」
「へっ、どーだかな。おめーみてーなニブい女に何が出来るってんでぃ」
「言ったわねっ!?」
「おー、ニブいっつったらどうするってんだよ」
「…っ、」




悔しい!
ちゃっかり人の胸まで見ておいてこの言い草。
あーそう。
そういう態度なんだ。
なによ、そんなわざとらしく身構えちゃって。
言っとくけどねえ、あたしだっていつまでも言われっぱなしのままじゃないんですからね!





「な、なんだよ!い、言っとくけどな、おめーにやられるほど おれは――!」








身体ごと向き合って間合いを詰めた途端、急にワタワタと慌て出す乱馬。
その顔の横から ぐいっと。





力任せにそのおさげを引き寄せ、頬に一瞬触れたのは 他でもないあたしの唇。











「…どう?これでもニブい?」
「い、いや、そ、その、」
「……」
「えっと、あの、ニブく、ないです」
「…へへ」




まるで一気に空気の抜けた風船みたい。
今にもふにゃふにゃと湯気が立ちそうなほど さっきまでの強気な態度は影を潜め、耳の端まで真っ赤に染まっていく。
急にそんな顔してみせるなんて、それはそれで反則でしょ?




「あ、あかね?」
「なに?」
「え…と、そ、その、…なんで?」
「…別にぃ」
「べ、別にって…っ」
「あたしのことニブいって言う前に あんたも人の気持ちにもう少し敏感になったらどう?」
「な、何だよその言い方!まるでおれが人の気持ちに鈍感みてーじゃねえかっ!」
「みたいじゃなくてそうなのよ」
「だーっ!かわいくねーなっ」
「はいはい、かわいくない女で悪かったわね。いいから勉強中だし出て行って」
「その態度もかわいくねーぞっ!」
「…さてと。今日の乱馬は自力で宿題をする、と」
「き、きたねえな!」
「どっちがよ」
「……一時間。一時間後、もう一回宿題写しに来るからなっ!」
「あのねー。なんで宿題写すあんたがそんな偉そうなのよ」
「うるせーっ!と、とにかくその、そ、そ―いうことだからっ」
「ちょっと…っ」
「後でまた来るからなっ!覚えてろよっ」






まったく。
これが頬にキスされた直後の態度なんだから乱馬らしいというか、どこまでいっても乱馬は乱馬というべきか。
どうせ今頃はきっと扉の向こうで力が抜けてしゃがみ込んだりしているのだろう。
それにあたしが気付いてないとでも思ってたら大間違いなんだからね。
なんならいっそ、知らないフリして扉を開けてからかうっていうのもアリかしら。
と、そこまで考えて「やめた」と首を振る。
だってそんな事でもしようものなら、今度こそ当分乱馬はあたしの部屋を訪れなくなるだろう。
それはそれでちょっと寂しい……なんて思ってしまうのは、はたして惚れた弱みだろうか。




「なにが“一時間後 覚えてろ”よ。自分のほうがやられっぱなしのくせに」





だからたまには。
たまには乱馬の方から仕掛けてきてよね。



そんなことを思いながら。

あたしはなかなか進もうとしない時計をエイッと指で弾くと、鼻歌交じりに宿題のノートを開いたのだった。






< END >






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comment (8) @ (勝手に)捧げもの

   
また強くなる  | 不器用どうし 

comment

: yoko @-
ほっぺ抑えながらズルズルしちゃう乱馬がかわいいなぁ、もうw
おさげくいっ、は正義です…
あかねのちょっと大人な心境が書き足されてておもしろかったです!次は乱馬、君が頑張る番だ〜(*´∀`)
2017/05/05 Fri 14:50:16 URL
管理人のみ閲覧できます : @
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2017/05/06 Sat 13:28:11
Re: タイトルなし : koh @-
yokoちゃん

おはようございます。
おさげくいっ、は乱馬ならではですよね~(´艸`*)。ああ、なんて美味しいんだ…。
勢いづけない乱馬に対してAまではあかねちゃんが頑張れると思うのですが、その先は乱馬次第ですよね。
しかも意外とその先は乱馬が暴走してあかねちゃんに怒られそうな(^▽^;)。
BからCまでの道のりは遠そうだ…。(もうこのABCが昭和だよね 笑)
2017/05/07 Sun 04:02:37 URL
Re: タイトルなし : koh @-
2017/05/06 Sat 13:28:11 コメント主様

おはようございます。
「夜おれが大変なことに…」…そうなんです。まだ17~8歳ですもの。
ちょっとしたことでスイッチが入っちゃうんです。←

でもってキスまでは意外と(吹っ切れたら)あかねちゃんの方が大人なんじゃないかなぁと思ったり。
ただ、そこから先は乱馬次第ですよね(´艸`*)。
お空に飛ばされることを覚悟で頑張っていただきたい所存ですっ!

ちょっとこの数日気持ちが落ち込んでいたので(創作意欲ではないですよ💦)、私もコメント主様にお返事することで自分の気持ちをクリアにすることが出来たような気がします。
本当はお隣シリーズなど連載物を書きたくて仕方ないのですが、時間的な余裕の問題で単発ポロポロしか書けず、しかも自分の力量に妙に冷静になってしまって「…これ、お話って言っていいのかしら?」なんて迷ってはブレブレな私。
まさに「書きたいと思った時に書く」と開き直りたいと思います(*^^*)。
それにしてもGWは家族に手が掛かり過ぎてダメだこりゃ~💦。
2017/05/07 Sun 04:23:11 URL
かーいーなー!もー! : 憂すけ @-
乱馬目線とあかねちん目線。同じお話を両方の目線で見れるって良いですよね!?”あぁ、本当はこの時、こんなことを想っていたのね!”と、振り返ってはニヤニヤ。( ̄▽ ̄)似た者同士の2人が可愛くてしゃーないです!はぁ・・・原作でも見たかった・・・!ほっぺチュウ!!( ;∀;)
2017/05/10 Wed 13:26:02 URL
あと! : 憂すけ @-
那由他さんの!!イラストにもやられましたーー!!悶えます!あざっス!kohさん!那由他さん!!ヽ(^o^)丿
2017/05/10 Wed 13:28:00 URL
Re: かーいーなー!もー! : koh @-
憂すけさん

こんにちは。
この那由他さんの初々しい乱あの二人が堪らないですよね♡
私の中で「開き直ったあかねちゃんはキスまでなら強気」というイメージがあるので、ここはクイッといってもらいました(*^^*)。
あーでも憂すけさんの仰る通り、原作でも見たかった。
猫化のキスだけじゃなくて、せめて合意の上でのほっぺにチュウくらい……ねえ?(涙)
2017/05/10 Wed 16:03:39 URL
Re: あと! : koh @-
憂すけさん

あ💦、コメント返信先走っちゃいました(^▽^;)。
色使いといい表情といい、THE・那由他さんですよね♡
2017/05/10 Wed 16:04:53 URL

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