うたた寝の後は 

2017/07/11
どこまでも ゆるゆると。
久し振りに切ないものを書きたいなー。
でもどっぷり甘いのも書きたいなー。
あの止まってるシリーズも書きたいけど……でもこのタイミングではどうなんだろう。
うーん。その前に軽く作文でもしてみようかなぁ。
そんな感じの ゆるゆるお気楽なお話です(*´-`)。

拍手には とある夏のお話を置いてあります。





【 うたた寝の後は 】



「あら、めずらしいわね。あかねがこんな所で寝ちゃうなんて」
「本当だ。あ、でも今日は五、六時限がプールだったから」
「そっか。きっと疲れが出ちゃったのね。元々プールっていうだけで寝つきが悪かったみたいだし」
「確かに今日も見事な溺れっぷりだったものね」
「不思議よねぇ。他のスポーツは何でもござれなのに、どうしてあそこまでカナヅチなのかしら」
「まあまあ。あかねが あんまり完璧だと乱馬くんが助ける出番もないし、ちょうどいいんじゃない?」
「それもそうね」



ここはオレンジ色の陽射しが差し込む放課後の教室。
その一角にある自分の席で木の天板に腕を折り曲げるようにし、それを枕にしてすうすうと寝息を立てるのは眠り姫こと、あかねの姿だ。
規則正しいリズムで気持ち良さそうに肩を上下させながら、時折ぴくりと揺れる弧を描いた長い睫毛は、女のあたし達から見てもかわいらしいの一言に尽きる。
こんなに気持ち良さそうに寝ているんだもの。
もう少しこのままで居させてあげたいと思う反面、教室の反対側からこちらをチラチラと盗み見ては、何か言いたげにしているのは おさげがトレードマークのあかねの許嫁だ。
やれやれ。本当に手が掛かるクラスメイトなんだから。
しょうがないわね、とゆかと目配せし、さり気ない風を装うと真っ赤なチャイナ服に声を掛ける。



「乱馬くーん!」



「なんだよ」と面倒くさそうに返事をし、それでいて素直にこちらにやって来る乱馬くん。
決して大きな声では言えないけれど、とある某キャットフードの“ネコまっしぐら”のキャッチフレーズを耳にする度、乱馬くんの仕草一つ一つが“あかね まっしぐら”に脳内変換されてしまうのはここだけの秘密だ。


「ねえ、乱馬くん。あかねが寝ちゃったの」
「んなこたー見りゃわかる」
「ね、起こして連れて帰ってやんなさいよ」
「はあ!?おれが?冗談じゃねえ、なんでこんなかわいくねー女を――」
「そう。なら九能先輩でも呼んでこようかしら」
「へ?ま、待て待て、なんでそこで九能の野郎が出てくんだよっ!?」
「だってしょうがないじゃない。あたし達じゃあ あかねをおぶって帰れないもの」
「別におぶって帰んなくても今 叩き起こしゃーいいだけの話じゃねーか」

それはそうなんだけど。でもそれじゃあ、乱馬くんを呼んだ意味がないでしょ。
多少強引ながら、あたし達だって簡単には引き下がらない。

「プールで疲れ切った許嫁が寝呆けたまま帰っても心配じゃないわけ?」
「んなこと知らねーよ。そもそも こいつがカナヅチなのがわりーんだろーが」
「乱馬くんって冷たいのね」
「なんでそーなる」
「いいからいいから。せっかく同じ家に帰るんだし、あかねを起こして連れて帰ってあげなさいな」
「だからなんでおれが――!」
「あ、そんなに嫌ならやっぱり九能先輩を、」
「だ――っ!!わ、わかったっつーの!起こせばいーんだろ、起こせばっ!」


なによ。本当はあかねの寝顔を誰にも見られたくないくせに、まったく素直じゃないんだから。
あたしはゆかと視線を交わすと乱馬くんにばれないように肩をすくめ、二人の邪魔をしないようにほんの少しだけ距離を空ける。





【 高校一年生 】

「おい、あかね。起きろ、おーい!」
「ん……、」
「おめー、間抜けな顔していつまで寝てんだよ」
「え……あ、あたし……?」
「わはは!起きた途端、いきなり凶暴面。眉間にすげー皺が寄ってんぞ?」
「ちょ…っ、寝起き早々なんなのよ、あんたはっ!」
「んなの知らねーよ。おれだっておめーのこと、起こしたくて起こしたわけじゃねーもん」
「だったら放っておけばいいでしょっ」
「おーこわ。さすが 歩くずん胴怪力女」
「あのねぇ、人を妖怪みたいに言わないでよ!大体、今はずん胴も怪力も関係ないじゃない」
「そんだけ言い返せるならもう目ぇ覚めたな?いーから帰るぞ」
「待ちなさいよっ、誰もあんたと一緒に帰るなんて言ってないでしょ」
「うるせーなぁ。おれだって別におめーみてーなかわいくねー女と一緒に帰りたいわけじゃねーけどよ。あかね、朝、かすみさんに米買ってくるよう頼まれてただろ?」
「あ、そういえば」
「そんでおめーだけに米持たせて帰ったら また何言われっかわかんねーからな」
「なによ。別にあんたの助けなんて要らないわよ」
「別におれは あかねのこと助けるなんて一言も言ってねーぞ」
「あんたってホント最低ね」
「おーそりゃ悪うございました。そーいうおめーこそ、も少しかわいげのある態度取れねーのかよ」
「かわいげのある態度って?」
「そーだなぁ。たとえば“乱馬様 お願いします。あたしみたいな凶暴怪力女でも三十kgの米はさすがに重たいので運ぶのを手伝ってください”とか?」
「ふんっ!あんたに頭下げるくらいならあたし一人で持つ方がよっぽどマシよ」
「よっ、現代の女三四郎。んじゃ一人で頑張れよ」
「ええ、ええ。言われなくてもそうするわよ!」
「かわいくねー女」
「だったらほっといてよ」
「ほーんと かわいくねえっ!」














「あーあ。せっかく良かれと思って乱馬くんにバトンタッチしたのに」
「結局こうなっちゃうのよね」

あたしとゆかは顔を見合わせやれやれと漫画のようにお手上げのポーズを取る。
そこにいつの間にか加わったのは、同じく呆れた顔をしたひろしと大介だ。

「あいつら、家に帰ってもあーなのかな」
「あら、ひろしに大介。見てたの?」
「そりゃあなぁ。教室の真ん中であれだけ大騒ぎされりゃ、嫌でも見てしまうわい」

そうよね。
声を潜めるだとか、もう少し取り繕うだとか、そういった高等技術はあの二人の辞書に無いらしい。
はっきり言ってしまうと、良くも悪くも自分達が有名人である自覚がないのだ。
机に腰を掛けながら、大介が惜しいよなぁとぼやいてみせる。

「乱馬もなぁ。何だかんだ言ってどうせ米の一つや二つ持ってやるだろうに、もう少し素直になれないもんだろうか」
「まあな。でもあいつが素直になったら それはそれで裏があるようにしか思えんけどな」
「要は日頃の行いがものを言うってわけね」

あらら。
いつの間にか こうして乱馬くんへのダメ出し大会になってしまうのだから不思議なものね。
一応、これでも親友の想い人。今回は少し情けを掛けて軌道修正でもしておこうかしら。
コホンと一つ咳払いをし、あたしはもっともらしく尋ねてみる。

「それにしてもあの二人、一応許嫁同士なわけじゃない?」
「それなんだよな」
「はっきり言って世間が認識する許嫁の響きとは程遠いわよね」

……ですって。乱馬くん。

「許嫁同士だからって、あいつらがイチャイチャ甘えることなんて はたしてあるのだろうか」
「きっとあれはあれで二人なりにじゃれてるつもりなんでしょうけどねぇ」
「乱馬……どこまでも不器用なヤツめ」

本当、その通り。
これじゃあ、今時の小学生のほうがよっぽどマセて進んでるわ。
そんな奥手な二人など今更じゃないというように、ゆかが手をひらひらさせながら言う。

「ま、あの二人が突然甘い台詞でも囁こうものなら、それはそれでびっくりしちゃうけど」
「それは流石にないだろう」
「万が一乱馬とあかねが素直になった日にゃ、雪が降るな」
「いや、槍が降るだろ」
「なら おれは隕石が落っこちてくるに百円賭ける」
「あたしも」
「おれも」
「あたしだって!」
「それじゃあ、賭けにならんじゃないか。誰か大穴狙いはないのか?」
「「「…………」」」


静まり返る教室。



「……だよなぁ」


一拍の間を置き、しみじみと呟く大介の言葉がやけに説得力を持っているように響いた。




あーあ。
あの二人が素直になるなんて、きっと真夏に雪を降らすことより難しいだろう。
よって、今日も一年F組の窓から見える景色は晴天なり ――。











【 高校二年生 】

「おい、あかね。起きろ、おーい!」
「ん……、」
「おい、大丈夫かよ」
「あ……乱馬……」
「あかね。おめー、顔に腕の跡がすげー付いてんぞ」
「や、やだっ、うそっ!?ちょっと見ないで……っ」
「わはは。嘘だよっと」
「もうっ!信じられない、ばかっ!」
「いてぇっ!お、おめー、寝起きで人のこと殴んじゃねーよっ!」
「今のはあんたが悪いんじゃないっ」
「おれが?なんでだよ」
「だ、だって、その……、人の寝顔なんて勝手に見るから、」
「ばーか。おめーの寝顔なんてもうとっくに見慣れてるっつーの」
「それでも嫌なのっ!」
「んなこと言ったってしょうがねーだろーが」
「………………たしだって見てやる」
「へ?」
「あたしだって今度あんたの寝顔をしっかり見てやるんだからっ」
「べ、別に寝顔くれーいーけどよ、んなムキになることかぁ?」
「とにかく嫌なのっ!勝手に寝顔は見ないで!」
「んじゃ、断ればいいのか?これから寝顔見ますって」
「そ、そういうわけじゃなくって、えっと、」
「安心しろよ。あかねなんて寝てよーが起きてよーが その間抜けな面は大して変わんねーからよ」
「ひどいっ!あんただって しょっちゅう変な顔して授業中に寝てるくせに!」
「ばーか。おれはどんな顔だろーと充分カッコいーからいいんだよ」
「ばっかじゃないの。ナルシスト」
「ずん胴」
「優柔不断」
「怪力女」
「怪力ってこれのことかしら!?」
「だ――っ!待て待てっ!い、今のは冗談!ほんの冗談だっつーの!」
「ふんっ」
「それより、そろそろ帰ろ―ぜ」
「あ、そうね。そう言えば かすみお姉ちゃんから帰りにお使いも頼まれてたんだったわ」
「また米三十kgだっけ。ああ見えてかすみさんも人使いあれーよな」
「ふふ。何だかんだ言ってお姉ちゃんにはみんな逆らえないからね。あ、でもお駄賃貰っちゃった」
「お駄賃って?」
「余ったお釣りでアイスでも食べなさいって」
「っつーか 殆ど余んねーじゃねえの。これでホントにアイス二つ分買えるかぁ?」
「まあまあ。もし一つでもパピコだったら半分こ出来るじゃない」
「とかいって米を持つのはおれなんだろ」
「細かいことは言わないの。さ、帰ろ」
「おー」
「きゃ……っ、」
「あ、ばかっ。寝起きで急に立つんだから足元気をつけろよ」
「ご、ごめんね。あの、ありがと」
「ったく鈍くせ―やつ」
「もう!せっかくお礼言ったのにっ」
「なんだよ。おめーが鈍くせ―ことには変わりねーだろーが」
「前言撤回!パピコ買っても絶対あんたになんか半分あげないんだからっ」
「ふざけんなっ。だったらおれも協力しねーからな!?」
「ケチ」
「どっちがだよっ」














「……なあ。一応確認していいか?」
「どうぞ」

やや目を細めながら、怪訝な顔をするひろしの先を促す。
もちろん、あたしたちは例の如く教室の反対側から一連のやり取りを眺めていた。

「あれって喧嘩しとるんだよな?」
「多分、な」
「そのわりには乱馬のヤツ、ずっとあかねの腰を支えとるけどな」
「っつーか、顔ちけえ」

今さら?
今さら そこをツッコむの?……とは言えない。
代わりに別の疑問をあたしも口にする。

「寝顔を見られたくないっていうのはまだ分かるにしても、仕返しに乱馬くんの寝顔を見るっていうのも、ちょっと……ねえ?」
「一体どんな状況で寝顔を見るつもりだというのだ」
「く……っ、うらやまけしからんっ!」

そうよね。
考えようによってはなかなかの意味深発言だわ。
大体、寝顔がどうのこうのの前にあの距離感はどうなのよ。

「顔に跡ついてるなんて言いながら、さり気なくあかねのほっぺた触ってたしね」
「あかねも極自然に受け入れとったけどな」
「っていうか、パピコ半分こですって」
「きっとあれだろ?そこでまた あげるあげないのじゃれ合いして、最後は乱馬があかねの食いかけをパクッとするんだろ」
「ひ、ひろし、落ち着け!お前、目がすわっとるぞ」

せっかく分けたパピコも きっとお互いの分を取り合いしちゃうんでしょうね。
それもまた美男美女でCMのように様になるのだから嫌になっちゃう。


「くっそー。夏だよなぁ」
「夏よねぇ」
「まあ、あいつらに関しては年がら年中 猛暑日だけどな」
「「「だよねぇ」」」




二年F組。晴れ、時々雷雨なり。
突発的な巻き込み事故……もとい、ゲリラ豪雨に注意しましょう。









【 高校三年生 】

「おい、あかね。起きろ、おーい!」
「ん……、」
「いつまで寝てんだって……お、おいっ、」
「んー……、ベッドまで……抱っこ……」
「こ、こらっあかね、こ、ここ、まだ学校だから、その、」
「え……、あ、や、やだ……っ!、えっと」
「め、目ぇ、覚めたか?」
「う、うん。今ので一気に目が覚めた」
「そ、そっか、」
「うん……」
「か、かかかか帰ろーか、あかね」
「う、うん、そうね」
「な、なんか今日、あちーよなぁ」
「本当よね」
「あの、さ」
「なに?」
「きょ、今日、また勉強しに……その、……あ、あかねの部屋、行っていいか?」
「え……っ」
「ほ、ほら、おれの部屋エアコンねーし、わ、わざわざおれ一人のために居間のエアコンつけんのもわりーし、」
「あ、えっと、そうよね。うん、確かにもったいないわよね」
「だろ?」
「う、うん」
「んじゃ、飯食って風呂入ったらおめーの部屋行くから」
「わかった。あ、でも、えっと、その……」
「なびきだろ?そこは気ぃ付けるから任せとけって」
「ばか、」
「それはそうと、今日はかすみさんに買い物頼まれてねーのか?」
「うん。今日は特に何もないわよ」
「んじゃ、ドラッグストアだけ寄ってから帰ろ―ぜ」
「うん。いいけど、何買うの?」
「……おめー、やっぱ鈍いよなぁ」
「え?なに?」
「別に」
「なんかまた あたしの悪口言ったんでしょ」
「お。よくわかってんじゃねーか」
「なによ、なんて言ったの?」
「大したことじゃねーよ。ただ、あかねはずん胴だなって」
「最低!」
「まあまあ。そのずん胴を直すのにおれも微力ながら手を尽くしてだな、」
「もっと最低っ!」
「あ、こら あかね!待ちやがれっ」
「知らないっ!あんたなんてもう今日から一人で勉強したらいいのよっ」
「あ。そーいうこと言うのか、おめーは」
「だったらなによ、なんか文句あるわけ?」
「おめー、後で覚えてろよ」
「そんな脅しには乗らないんだからっ」
「とか言って 結局あかねだって最後は、」
「きゃあっ!ちょ、ちょっと、こんなとこで一体 何言う気よ!?」
「へーきへーき。別にバレてねーって」
「そ、そうかも知れないけど、でも、」
「とにかく、いーから帰るぞ」
「もうっ。自分が先に意地の悪いこと言ったくせに!」
「へーへー。いーから続きは後でな」
「言っときますけど、本当に今日はあたしの部屋出入り禁止だからね!」
「んじゃ窓から入るわ」
「ちょっとっ!人の話を聞きなさいっ」














口を開かなくても、何を言いたいのかは痛いほど分かった。
そんな押し黙った空気を静かに破ったのは、やっぱりひろしである。

「……あのさ。念のため、確認していいか?」
「……おー。聞くだけ聞いてやる」

無気力に応えるのは、もちろん大介だ。

「おれの聞き間違いでなければ、あいつら “バレてない”って言ってたよな?」
「言ってたな」
「確かに言ってたわね」
「間違いなく言ってたわ」

すごい。
皆の意見がドミノのように綺麗に重なったわ。
握った拳の行き場を失くしたまま、ひろしがぶるぶると奥歯を噛む。

「く……っ!なんなんだ、あいつらは……っ!」
「っていうか奥さん、見ました?あかねのヤツ、“ベッドまで抱っこ……”ってナチュラルに乱馬の首に腕を回しとったぞ」
「っか――!うらやまけしからんっ!!」
「かろうじてここが教室だから乱馬くんも踏み止まったけど、ねえ?」

あぶない あぶない。
危うく親友同士のラブシーンを目撃しちゃうところだったわ。
流石にそれはちょっと目の毒だからご遠慮願いたいのよね。

「じゃあなんだ?家の中だったら許される。そんな仲なのか!?二人はそんな仲なのか、ええっ!?」
「落ち着け ひろし。おれは前から薄々気が付いとったぞ」
「薄々……薄々を買いに、二人でドラッグストアへ……」
「そっちの薄々じゃないわい!っていうか やめろっ!いくら親友とはいえ、まだそこまで生々しい想像には気持ちが追いつかんぞっ!」

あらら。
いきなり話題がそっちに振り切れますか。
とはいえ、これには男女で意見が分かれるようで。
興奮する男子をよそに、私は至極冷静にゆかに問い掛ける。

「えー。でも責任なくするよりかは、ちゃんと用意するだけ乱馬くん偉いんじゃない?」
「そうよねぇ。お小遣いだってバカにならないだろうし」
「ゆか……さゆり……」
「お前ら、なんでそんな冷静なんだよ……」

だって……当たり前のこととはいえ、ちょっと意外よね。
そこら辺、乱馬くんもちゃんとあかねの身体のことを考えてくれているようで、大切な友人としてはほんの少しホッとする。
とはいえ、買い出しの内容に気が付かないあかねもあかねだけれど。
あたしは先程の二人のやり取りのある部分を思い出し、思わずプッと吹き出した。

「それにしても、乱馬くんもわざとらしいわよね。よりによって口実が勉強だなんて」
「ほんとほんと。一体なんの勉強する気なの?って感じだわ」
「そもそも食事して風呂上がりに、年頃の女の子の部屋に行くこと自体がおかしいでしょうが」
「そう考えるとあれよね。あかねのお姉さんも世知辛いようで色々堪えてくれてるわよね」
「わかんないわよ。もしかしたらビデオカメラの一つでも……って、流石にそれはないか」

そこにひろしと大介も乗ってくる。

「そもそも あいつらは一体なんの勉強をする気なんだ」
「いや、でも今日は一人で勉強しろって言ってたぞ。それも今となってはまた意味深な――」
「やめとけ大介。一応、ここには女子のゆかとさゆりもいるんだぞ」
「ちょっと。一応とは何よ、一応とは」
「失礼しちゃうわね」

っていうか、既に散々あたし達の前で男の本音ダダ漏れでしたけど?
流石 乱馬くんの親友。もしかして自分達の発言に気が付いてないのかしら?
そこに やや遠い目をして教室の入り口を見つめるのは大介だ。

「っつーか あいつら、ちゃっかり手を繋いで教室出て行ったことに気が付いとらんな」
「いや、寧ろ おれらが居たことすら気が付いてないんじゃないか?」
「その可能性は大いにあるな」
「くそー。いっそのこと、天道家に“乱馬の部屋にもクーラー導入”の投書してやろうか」
「待て。そうなったらそうなったでイタす場所が増えるだけだ」
「……それもそうだな」
「それに、時にはエアコンのない部屋で汗まみれになってというのもまた一興」
「だ、大介?」
「…………というのは ほんのかわいい冗談だ」
「貴様、嘘をつくなっ!今、確かに笑えない間があったぞ!」

ワーワーと制服のシャツを掴んではしゃぐ男子二人を前に、あたしとゆかはボソリ本音を漏らす。

「……男子って最低ね」
「ち、違うっ!おれは何も、」
「とかいって ひろしもちょっとそう思っただろ?」
「……う、」
「そういうあんた達は彼女の一人もいないんだけどね」
「やかましいっ!」
「あーあ。いいなぁ、あかね。そりゃ、恋しててキレイになるわけだ」
「くっそー。それが少なからず乱馬のおかげかと思うと腹立つな」


確かにね。
そりゃ羨ましいわよ。
だけどね。なんだかんだいって相思相愛。
そこに他の誰かが入り込む余地など 最初からさらさらなくて。
羨ましいを更に上回る、親友の幸せを嬉しく思う気持ち。
うん。そんな風に思える自分も嫌いじゃない。


「まあまあ。こんなところで愚痴ってても仕方ないから、あたし達も帰りましょうよ」
「それもそうだな」
「ね、どうせだから駅前のコンビニでアイス買って食べない?」
「お、賛成!」
「じゃあ帰ろ」



残念ながら、あたし達にパピコを半分こする相手はまだいないけれど。
これはこれで、青春でしょ?






風林間高校、三年F組。

今日もやっぱり 猛暑日です。








< END >





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comment (14) @ 高校生編 短編(日常)

   
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comment

く~💦💦 : ひなた @-
師匠!今晩は!寝ようと思ってたのに……つい誘惑に負けて立ち寄ったら💦💦楽しくてニヤニヤして寝れない~💦だめ、
読み返さない!絶対……!
……でも、あと一回だけ読んだら寝ます💦見たい✨
あとはまた明日の朝にしよう✨
くだらないコメントすみません💦
夏はやっぱりパピコ~✨
2017/07/11 Tue 00:34:39 URL
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2017/07/11 Tue 10:53:46
: yoko @-
ベットまで抱っこ、はメガトン級の萌えの衝撃でした…(´∀`*)ウフフ
うすうす、一緒に買いに行くなんて、既に夫婦かよっ♡
拍手もその後の二人の展開を予測させてどきどきしました(/ω\*)
2017/07/11 Tue 23:38:12 URL
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2017/07/12 Wed 14:09:17
パピコが大好き♡ : 憂すけ @-
一パピコファンとしまして。大変楽しく拝読させて頂きました!(笑)
高校一年生から順を追って変わっていく2人の関係が会話形式によってとても楽しく!且つ分かりやすく!グイグイと引き込まれ、気が付けば大すけ達「友人目線」で拝読して居りました。
友達の目から見ても明らかに毎年甘くなっていく2人の関係と会話。高校三年のやり取りなんて・・・!!最高ですkohさん!!(#^^#)
最初は「可愛い意地っ張り同士なやり取り」から変化していく様子に、頬が緩みっ放しです!
kohさんの乱あって、いつもいつも拝読する度に「やっぱかーいーぜ!この2人は!!コンチキショウめ!!」って再確認させてくれて、本当に有り難いのです!今後も引き続き、宜しくお願い致します♡ <m(__)m>
2017/07/12 Wed 14:26:58 URL
Re: く~💦💦 : koh @-
ひなたさん

おはようございます。
ゆるゆるなお話にお付き合いいただき、ありがとうございました(´▽`*)。
会話だけのこの手抜き感はどうなの!?とセルフ突っ込みをしつつ、それでも分かり易い単純……いや、素直な二人に感謝です(*^^*)。
夏といったらパピコですよね~♪
なんだか、なにも考えずケンカップルを書きたくなったので楽しかったです♡
2017/07/13 Thu 05:56:24 URL
Re: No title : koh @-
2017/07/11 Tue 10:53:46 コメント主様

おはようございます。
確かに言われてみると主人公としては「おいおい」なキャラですよね、乱馬って(^^;。
格闘は強くても、自分だったらやd……あ、えっと、あかねちゃんだったらOKだと思います💦。
といっても自分も高校一年生のまま大人になったかというと流石にそれはないので(特に男の子の精神的成長って女の子に比べて遅めですものね)、大学生・社会人になった乱馬に期待です。
……あれ?高校生乱馬は???←
おバカな子ほどかわいい。なんて便利な言葉なんだ♡
こんなゆるゆるお話にコメント頂き、ありがとうございました✨。
2017/07/13 Thu 06:01:23 URL
Re: タイトルなし : koh @-
yokoちゃん

おはようございます。
きっとベッドの上“だけ”は甘やかしてくれると思うんですよね、うちの乱馬くん。
(爽やかな朝に私は一体何を……)
そして薄々もちゃんと用意してくれると思うんです、うん。
(いや、だから本当に朝から……)
きっと消費量、半端じゃないと思うんですよね、若いから。
(ああ、違うの。ワタシ、ソンナヒトジャナイヨ)←片言で逃げる
2017/07/13 Thu 06:04:48 URL
Re: お邪魔しますm(__)m : koh @-
2017/07/12 Wed 14:09:17 コメント主様

おはようございます。
乱あ温泉!そんな風に言っていただけて嬉しいです✨。
あ、といっても今回は非常にゆるんゆるんのお話でしたが💦💦。
糖度―!切なさ―!そろそろ本気で戻って来―いっ!と一人空に叫んでいます。←

他の二次がどうかはあまり詳しくないのですが、こんなにも原作後の二人を想像して楽しめるなんて本当にらんま1/2って、高橋留美子先生ってすごいなって思います(*^^*)
まだまだ妄想が尽きません~💦
コメント、ありがとうございました♡
2017/07/13 Thu 06:09:35 URL
Re: パピコが大好き♡ : koh @-
憂すけさん

おはようございます。
青春時代の安くて分けっこ出来るアイスといったら、もうパピコしかないですよね(*^^*)。
ピノやアイスの実でもいいけど、絶対どこかのおさげ男が「足りねえ」と文句を言いそうで。
ちなみにアイスによっても妄想が変わってくるので、あらためて乱あちゃんの引出しの多さを感じます。いや、寧ろ私が病気なのか?はて……。
本文は私もゆかやさゆり目線で妄想していました。
なんだかんだ言って素晴らしい友人達に恵まれていますよね✨。

余談ですが、大介とひろしの就職活動の際「大らかさと忍耐力には自信があります」とアピールする姿を想像したのはここだけの内緒です(´▽`*)。
2017/07/13 Thu 06:19:19 URL
|柱|qω〃)ポッ : ようこ @-
朝から胸キュンありがとうございます!!
高1から順を追って高3へ2人の親密さが増しててニヤニヤがとまらない(*/∀\*)
特に高3のベットまで抱っこって〜〜家では普通なのかしらってキャ〜〜|柱|qω〃)ポッ
寝顔も見あっているのかしら(〃艸〃)ムフッ
2017/07/13 Thu 07:14:37 URL
Re: |柱|qω〃)ポッ : koh @-
ようこさん

こんにちは。
時間の経過を追うごとに美味しい妄想が滾るのが乱馬とあかねちゃんです(*^^*)。
きっと高校1~2年生の頃でも2人にとっては幸せなイチャコラ時間だったと思うのですが、高校3年生になって乱馬くんはピンクのご褒美をゲットしました。←受験生なのに…
もう あかねちゃんの部屋の中では勝手にして下さいデス、はい。
私はただ、ひっそりと屋根裏から覗くだけです…。
2017/07/13 Thu 13:38:54 URL
管理人のみ閲覧できます : @
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2018/07/07 Sat 13:17:28
Re: こんにちは。 : koh @-
Y~さん

こんばんは。お返事が遅くなってしまってすみません。
またまた懐かしいお話をお読みいただき、本当にありがとうございます////
みんなの前では普通ぶっていても二人きりの時はそれなりに甘えてるんじゃないのかなぁと^^。
特に“そういう後は”です♡
そして私、ひろしと大介の絡むお話が大好きでして……なので好きと言っていただけて本当に嬉しいです!
わちゃわちゃからかいつつ、保護者目線で乱馬とあかねの仲を見守って応戦してくれる感じがたまりません。
またぼちぼち創作できたら……と思いますので、お暇な時に覗いてみてください♡
ありがとうございました^^。
2018/07/22 Sun 22:02:08 URL

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