ダブル・A ①突然のライバル誕生 

2018/03/03
新シリーズ【ダブル・A】です。
何番煎じだと思いつつ、私は読んだことがない&書いたことがない!というわけで開き直ります^^。

 

 【 ダブル・A 】



 その日は幾つもの偶然が重なった。
 せっかくの受験休校なのだから友人同士で出掛けてみようよとか。
 出掛けた先がいつもの行動範囲からえらく離れた森と泉に囲まれた場所だったりとか。
 楽しく過ごしていたと思ったら、お決まりのように友人達が一計を案じてきたりとか。
 更にはそれを薄々分かっていながら、気が付かないフリしてまんまとハマってみたりだとか。
 かといって こんな郊外で乱馬と二人っきりになるも、急に恋人気取りの仲睦まじい雰囲気になるわけなどなく……。
 互いに会話が途切れないよう気を遣いながら、ちょっと近道してみようよという、いわゆる出先で浮かれてしまっただけなのだ。多分。
 そんなあたし達の目の前にはひっそりと、古びた洋館がそびえ立っている。

「ここって……」
「懐かしいなー。これってあれだろ、鏡屋敷!」

 そう。
 ここはかつて女らんまが誕生した、あの鏡屋敷だったのだ。
 どこをどうしてここまで辿り着いたのかはよく覚えていないが、兎にも角にも目の前にはあの鏡屋敷が建っており、誂えたように空には雨雲が広がり始めている。

「とにかくちょっと雨宿りさせてもらおうぜ」
「そうね」

 二人きりでいる今日くらいは女の姿にはなりたくない。そんな風に乱馬が思ってくれている……ような自惚れもどこかにあった。

「ごめんくださーい」
「おーい、じいさん。誰かいねーのか?」

 それにしても不用心な館である。
 鍵はおろか、大きな扉を開いても人っ子一人いないような不気味さが漂っている館内はひやりと冷たい空気が漂っていた。おまけに外は雨空で薄暗い。背後でバタンと扉が閉まり、その音であたしの肩がビクンと跳ねる。

「やーい、怖がり」
「な、なによ、今のはちょっと驚いただけだもんっ」
「とかいってホントはびびってるくせに」
「だから怖くなんかないってば。それより、電気のスイッチとかないのかしら」
「ったく、素直じゃないヤツ」
「はあっ!?」
「あかねがどーしてもっつーんなら、て、て、手ぇくらい、繋いでやってもいーけど」
「バカ言ってないで おじいさん呼んできてよ」

 なによ。手を繋ぐなら繋ぐでもっとわかり易くしてくれたらあたしだって少しはかわいげある態度で返せるのに、こんな言われ方して素直に甘えられるほど、あたしと乱馬の関係は男女じみたものではない。

「ちぇっ。かわいくねーの」
「はいはい、かわいくなくて悪かったわね」
「い、言っとくけどなぁ、さっきのだってほんの冗談だからな!?」
「わかってるってば。それより早く電気点けましょ」

 ムキになる乱馬をよそに軽くあしらえば、まだブツブツと面白くなさそうに頭を掻く。

「っつーかじいさん、いねえのかよ」
「でも鍵が開いてるってことはここにいるんじゃない?」

 それにしてもこう薄暗いと何も見えない。
 先ずは部屋の灯りを……。そう思って壁に手を這わしていた時だった。

「おい、なんか聞こえねーか?」
「そう? あたしには何も聞こえないけど……たとえば?」
「そーだなぁ。たとえば………………恨めしやぁあああ〜」
「ひ……っ!?」

 突然、耳の後ろで囁かれた低い声。
 その恐怖であたしは猫のようにビョンッと飛び跳ねる。無論、ここから先は予定調和な展開で。
 ツイていないことに果物が盛られたカゴをひっくり返し、バナナの皮に足を取られるまま転がる体でしがみついたのは──。
 
 ぶちぶちぶちぶち、シャア────ッ!

「「あっ!」」

 あろうことか、壁一面を覆う程に大きな鏡を隠す例の封印カーテンだった。

 
「お、おいっ、大丈夫かよ!?」
「あ、あたしは大丈夫! だけど、」
 






「──ちょっとぉ。いきなり騒々しいわねえ」
 




「………………………………やっぱり」

 そこに居たのは、あたし……ううん。あたしの姿そっくりそのまま映したコピーだった。
 
 
 *
 
 
「大体、あんたが変な声出して脅かすからっ」
「おめーが大袈裟に怖がるからわりーんだろ!?」

 ブツクサと文句を垂れながら、鏡屋敷を後にするあたしと乱馬。と、あたしのコピー。
 幸い乱馬が鏡に自分の姿を映さなかったことと その後すぐにおじいさんが現れてくれたものの、根本的な解決は前と同じ、一週間かけて封印カーテンを作り替えるほかない。
 いや、正確には他にもう一つだけ方法があった。それは例の“封印コンパクト”──いわゆる、鏡を覗き込んでしまった者をコンパクトの中に吸い込んでしまうというアレである。
 要はその中にコピーを閉じ込め、カーテンが出来上がるまでの一週間を待っていればいいだけのことだった……のだが、その案に断固反対したのは意外にも乱馬のほうだった。

「あかねみてーな乱暴者、一週間も一人で閉じ込めようもんなら鏡ごと破壊して出てきちまうだろうが」
「なんですってぇ!? あたしのどこが乱暴者よ!?」
「そ、そういうところ……だ…………」

 めしゃりと顔面を窪ませた乱馬が、それでも最後にダメ押しをする。
 とにかくカーテンが出来上がるまでの一週間。その間は決してコピーから目を離さないよう、あたし達の家に連れて帰ろうということになったのだ。
 
 しかしながら、連れ帰ったからといって全ての問題が解決するわけではない。
 というのも、

「……ふーん。まあ、中の上ってとこね」
「へ?」
「本音を言えばあたしはもっとこう、落ち着いた大人の男性が好みっていうか。もう少しあんたに知性を感じられたらいいんだけど」
「おいっ!」

 …………この性格だ。
 なんでもあの鏡、自分の美貌に大層酔いしれた令嬢が毎日自分の姿を映しては見惚れていたといういわくつき。不幸にも病に伏した令嬢は、恋人を作らなかったことを悔やみながら若くして亡くなり、それ以降鏡に映った者の姿を借りてはナンパに繰り出すという迷惑極まりない代物なのである。
 当然ながらこのコピーだってご多分に漏れるわけもなく。
 多少はあたしの性格を引き継いでいるものの、さっきから乱馬とあたしの顔を交互に見比べては品定めするような発言ばかりを繰り返している。

「ね、それより これから行くところってかっこいい男の人いるの?」
「はあ? そんなもん、いるわけないでしょ」
「待て あかね。一人いるじゃねーか」
「……」
「なんだよ、その沈黙は」
「とにかく残念でした! あたしはお父さんと三人姉妹だし、あとは乱馬とそのご両親がいるだけよ」
「なーんだ」
「おいっ、おめーもガッカリしたような声出すんじゃねえっ!」
「ま、コピーの気持ちも分からなくはないけど」
「どういう意味でいっ!」
 
 とにかくカーテンが出来上がるまで一週間。
 せいぜいニセモノのあたしが悪さしないよう見張っていなくちゃ。
 その時はそんな甘い考えしかなかったのだ。
 
 
 
 それにしてもトラブルが起こる時というのは不運が二つも三つも重なるものである。いや、不運が重なるからトラブルというのだろうか。
 まさにあと数百メートルで自宅に到着する。そんな時、突然つんざくような奇声が辺り一面に響いた。

「天道あかね―っ!」

 言わずもがな、その声の主は季節感を無視した袴姿の九能先輩で。
 どこからともなくあたしの姿を見つけ、蒼い雷が両手を広げてこちらに向かってくる。

「ややっ!? これはぼくの見間違いかっ!? 天道あかねが二人に見え」
「見間違いだ───っ!!」

 あたしに抱きつく前に、空の星へとなって消えていく先輩。
 こんなのいつものことで日常茶飯事。そう、なにもめずらしいことではない。
 彼女以外にとっては。
 

「……へえ」
「あ?」
「あんたって強いのね。驚いちゃった」
「なんでい、今さら急に」
「乱馬。ほら、コピーはこういうこと初めてだから」
 
 つんと脇を小突いて説明すれば、「あ、そっか」と手を叩く乱馬。
 するとコピーが意味ありげに笑った。
 少なくともあたしにはそう見えた。
 
「ねえ」
「あん?」
「あんたとあたしって許婚同士なんでしょ?」
「まーな。つっても親が勝手に決めただけだけど」
「……ふーん」
「な、なんだよ。まさか、相手がおれじゃ不満とでも言うつもりか?」
「そんなこと言うはずないじゃない。寧ろ逆よ、逆」
「へ……っ?」
「さっきはあんたのこと中の上なんて言っちゃったけど、こうして見ると結構かっこいいし」
「え? か、かっこいいって、そ、そりゃまあ おれはいつでもかっこいーんだけど」
「それにさっき、あたしをかばってくれたんでしょ?」
「別におれは おめーをかばったわけじゃねーぞ。ただあいつが」
「素敵」
「へっ? す、素敵?」
「そうやって“助けてやった”って恩着せがましくしないとこも男らしいわ」
「ちょ、ちょっとコピー!?」
「ねえ、もしかして“あたし”とあんたはもう男女の仲になってるの?」
「だ……っ!? な、なななな何言って、そ、そんなの、あるわけねー!」ないでしょ!?」
「なぁんだ。随分と奥手なのね」

 まあ、おかげであたしにはラッキーだけど。
 そう言ってあたしと全く同じ顔したコピーが乱馬の腕を取る。

「じゃあ、立候補しちゃおうかな」
「コ、コピー!? り、立候補って……」
「だから、親が決めた許婚じゃなくってあんたの“恋人”に」
「へ?」
「はぁっ!?」

 
 まさか、自分の分身が恋敵になるだなんてこと。
 この時まで、あたしは考えたこともなかった。
 
 
 

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comment (8) @ 高校生編 ダブル・A

   
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comment

ふっふっふっ… : kimmy @-
予告なしでもやって来ますよ~私は!
そして新作見つけちゃいました♥️

コピーネタ…確かにありそうだなぁと思いつつ、実は私も書きかけのまま放置している物が…f(^_^;

冬休み設定なので、バレンタインまでに仕上げるつもりが先にバレンタインネタをあげるという…(--;)
私の場合はあかねちゃんのコピーは出て来ないのでご安心を(…などと言い訳して、さらっと後日投稿する…かも??)

コピーあかね、乱馬くんに興味沸いちゃいましたね…( ̄ー ̄)☆キラーン
これは面白くなりそうな期待値グングン上昇ですね!
高校生編のシリーズ物お久しぶりで、ヤキモキなふたりとっても楽しみです!


2018/03/03 Sat 00:30:42 URL
: はづき @-
このパターン、私の記憶の中では初めて読みます!乱馬やあかねの反応がどうでるのか、面白くなりそうです!
2018/03/03 Sat 12:50:26 URL
管理人のみ閲覧できます : @
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2018/03/03 Sat 13:49:49
管理人のみ閲覧できます : @
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2018/03/03 Sat 23:24:27
Re: ふっふっふっ… : koh @-
kimmyさん

らんま原作の35巻はコピーと縁結びの笹で擦り切れるほど読みましたからね^^。
あの鏡屋敷のコピー騒動は後に「乱馬は裸エプロンが好き→コスプレが好き」と私の頭の中で脳内変換されるまでに印象深かったです笑。
そしてコピーのお話に関しては大好きな2次作者様の縦長漫画(?)で拝見したことがあって、もう大満足というか「ああ……もう2人の乱馬に言い寄られるあかねちゃんはこれを公式認定しよう……」とメロメロになってしまいまして。(あ、でも文字だとまた違って面白いかも♡)
なので私には書ける気がせず……ふとあかねちゃんのコピーで妄想してみました。
といってもこれ、実は1カ月以上放置していて汗。
まだまだ序盤しか書いていないものの、これ以上放置したら忘れてしまうということで始めてみました。
軽く楽しんでいただけたら幸いです(´艸`*)
2018/03/04 Sun 00:03:36 URL
Re: タイトルなし : koh @-
はづきさん

おおっ!そうですか!?
小心者ゆえ他の作者様のお話を拝見できていないので、少なくともはづきさんは初めてということでホッとしています^^。
私の大好きな絵師さんの漫画では乱馬が二人……というのを見たことがあって、その時はあまりのかわいさに昇天してしまいました////
とことん あかねちゃんの魅力に振り回されていただきたいと思います♡
っていうかあかねちゃんが二人って……想像するだけで贅沢ですよね~(´艸`*)
2018/03/04 Sun 00:06:25 URL
Re: 続き楽しみにしています! : koh @-
m~コメント主様

もう~////
やっぱり私、コメント主様と一緒にお茶したい!会ってとことん語りたいですっ////
元々 乱馬が他異性と接触することに対して極端に許容範囲の狭い私ですが(笑)、あかねちゃんならギリ大丈夫かと(´▽`;)。
あ、あかねちゃんが男の子に言い寄られて乱馬がヤキモチ妬くのは全然大丈夫なんですけどね。←
最初は軽いつもりだったのですが、あれも入れたい、これも入れたい……となってきて ちょっとどうしようかな~とニマニマ考え中です^^。
どうせなら原作風を楽しみつつ、あかねちゃんのみならず乱馬もヤキモキさせてみたいなぁとか。
そして【四月の嘘はコピーの恋】まで覚えていて下さっているなんて……!
こういう過去のお話にふれていただけるの、本当に本当に嬉しいし、ありがたいなぁって思います。
これだけで頑張れる……✨✨(作者あるあるだと思います)
積極的なコピーであかねちゃんがどう揺さぶられるか。
そこら辺もまだまだ考え中なのですが、一緒に楽しんでいただけたら嬉しいです(´艸`*)
2018/03/04 Sun 00:13:17 URL
Re: No title : koh @-
コメント主様

お返事不要とのことでしたので一言だけ。
続きが楽しみ……そう言っていただけるだけでとっても嬉しくて、何度もコメント読み返してしまいました!
そのお気持ちでまた創作意欲がむくむく湧いてきます。
ありがとうございました✨✨
2018/03/04 Sun 00:15:33 URL

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