神様に願った夜 

2018/09/19
※ R-18指定は設けておりませんが、受け止め難い描写を含む可能性があります。
拍手にも続きますので、読まれる際は併せてお進みください。



神様に願った夜




「おせえな……」
 
 さっきから何度も時計を振り返る。
 最初は三十分ごと。
 二十分。十五分。十分。五分……。
 再び視線をやった時計の針はまだ三分も進んでいないけど、窓の向こうに見える景色はすっかり夕闇に包まれていた。
 おかしい。どう考えてもおかしい。
 もう一度文字盤を睨み付ける。感情を逆撫でするように秒針は緩慢な動きを見せるが、おれの不安はみるみる膨らんでいく。
 …………あかね。
 一体なにがあった───?
 
 
 約束の時間は三時だった。が、そこであかねからかかってきた一本の電話。なんでも急用ができて到着が少し遅れるらしい。理由を聞いても答えようとはしない。ただ曖昧に「うん、ちょっとね」なんて小声で返す響きは後ろから聞こえてくる雑踏にかき消されてしまいそうだった。
 とはいえ理由を知ったところでどのみち待つだけだから大して気にする必要もない。おおかた買い物とかそんなことだろう。
 それより久し振りに会える。たかが一週間と馬鹿にするなかれ、前回会った時は大学の近くのファミレスで、そのまま飯を食って健全にお別れした。つまり、“そういうこと”もなかったわけで。
 自ずと高まる期待。おれは昨日の晩から念入りに掃除した部屋の中を見渡し、うんと頷く。
 どうだあかね、部屋も風呂もピカピカだ。ベッドに至ってはシーツまで洗ってあるこの細やかさ。それが一晩でどれほど汗を吸ってしわくちゃになるのか見物だろう。ついでにおれのコンディションもバッチリときている。ま、これはいつものことだけどな。あと忘れちゃいけねーのが例のブツだ。そのまま着けずにしたいという欲もないわけではないが、こればっかりはなぁ……。かつてあかねの大学でやらかしているおれとしては強く出られないのが悲しいところだ。
 いや、それでもっ! 触れ合うだけで!
 おれは一語一句勢いつけて喜びを噛みしめる。
 さあ来い、あかね。くれぐれも手料理だけは持ってくんなよ!
 
 ───とまあ、最初は悠長に構えていたおれ。が、時間が経つにつれて焦燥感だけが募っていく。
 今までこんなにも約束の時間に遅れたことがあっただろうか。いや、ない。少なくともこんなに遅くなるのならば追って一言くらいあってもいいはずなのに、あの電話を最後にあかねからの連絡はない。
 あまりせっつくのもそれはそれでみっともねえ。そんなつまらないプライドが邪魔しておれから電話を掛けることが出来なかったってのもある。
 送ろうか、送らざるべきか。メールの下書きフォルダには「今どこ?」「何時くらいになる?」「大丈夫か?」……。一言ずつのメッセージが送られることのないまま溜まっていくばかりだ。
 二月の夕暮れは早い。先程まで薄い光を残していた空もいよいよ黒く染まり、闇に幾つもの星がくっきりと浮かんでいる。細い弧を描く月は人骨のように白く不気味だ。おかしい。いくらなんでも、この光景を見れば時間が経ち過ぎていることなど容易にわかるはずなのに。
(まさか…………何かあったのか?)
 電車の遅延ってことはないだろう。それならあかねから連絡があるはずだ。念のため調べてみたが、そんな情報も得られない。
 ならば事故か。しかし、万が一そうだとしておれには連絡がなくても家には何かしらの連絡が行くに違いない。が、実家からなんの連絡もないところを見るとその可能性も薄い気がした。いや、でもわかんねーぞ。もしかしたら人知れずどっかで具合が悪くなってるのかもしんねーし、怪我をして動けなくなっている可能性だってある。あ、けどそれならそれでその場から連絡してくるはずか。なんせ東京にいて電波の通じないところなど今や皆無に近い。大体、突発的な怪我や病気だとしたら“急用ができたから遅れる”とわざわざ知らせることは不可能だろうし、順序が逆だ。
 他に考えられる理由は…………。
 おれは思いつく限りの理由を並べ、それをひとつひとつ打ち消していく。そう。何をどう考えても説得力がないのだ。辻褄が合わないとでも言うのだろうか。とにかくおれの直感が激しく警鐘を促している。“これは普通ではない”と──。
 穴が開くほど見つめた時計の針は既に七時に近い。約束の時間からもうすぐ四時間も経とうとしている現実に今さらながら驚愕した。
 実はつい先ほど、堪らずあかねの携帯電話に電話をかけてみた。が、虚しくコール音が響くばかりで、それも七回続いたのち留守番電話サービスに切り替わる。おれはなんのメッセージも吹き込むことのないまま、通話を切った。
 どうしよう。駅まで行って待つべきか。もしかしたらもうすぐ傍まで来ていておれの取り越し苦労に終わるかもしれない。いや、きっとそうだろう。そうであって欲しい。万が一入れ違いになってしまったとしても、あかねにはこの家の鍵を渡してある。あかねの好きそうなラインストーンがいくつも散りばめられた、Aのモチーフ付きの部屋(ここ)の鍵。もしもあかねがおれのいない間に来たとして、寒空の下待ちぼうけなんてことにはならないはずだ。
 おれは家の鍵と携帯をポケットにねじ込み、コートを羽織って家を飛び出る。歩いていたはずの足はいつの間にか駆け出し、駅に着く頃には肩で息をするほど全力で走っていた。しかしおれの希望を打ち砕くように、あかねの姿はどこにも見つからない。
(一体どうしちまったんだよ…………)
 もともと七時の約束ならばこんなに焦ることはないだろう。真っ暗とはいえ店はまだ開いているし、通りにだって人影はある。小学生の子どもならいざ知らず、あかねはもう大学生だ。いちいち目くじらを立てるほど遅い時間帯でもない。しかしながら、約束の時間を四時間過ぎてもあれ以降ひとつの連絡もないのは解せなかった。
 もしかして携帯電話の充電が切れたのか?
 理由としては最も現実的だろう。だが、それならそれで公衆電話という手がある。あかねの言う「少し遅れる」の少しがどれほどを指すのかは知らねーが、少なくとも四時間を少しと捉えるのは無理がある気がした。
 最初は苛立ちのほうが強かった胸の内で、次第に別の感情が膨らんでいく。それに気付かないよう敢えて他の理由を思い浮かべては駅の改札口から吐き出される同じ歳格好の女に目を皿のようにして眺め、溜め息をつく。
 いない。
 いない。
 あかねがいない。
 指の先がジンとかじかむ。はあ……っと息を吹きかけ、ごしごし擦ってポケットに突っ込む。なんせこの寒さだ。立っているだけで足元から熱を奪われていくような冷気が頬をひりりとなでる。そういえばおれ、腹が減ってたんだっけ。あかねが来たら一緒に飯でも食おうと思って、昼は簡単に握り飯で済ませただけだから当然かもしれない。なのに不思議と空腹感はなかった。代わりにあるのは息苦しいまでの不安だけで。
 あいつ、昔からお節介なんだよな。もしかしたらどっかの公園で子どもが木に靴を引っ掛けて泣いているのを助けたりとか、年寄りが困っているのを見捨てておけず家に送っているのかもしれねえとか、考え得るだけの想像力を働かせた。でもダメだった。そんないくつもの偶然を無理やり集結させたところで四時間も遅れるだけの説得力を持たせることは不可能だった。
(あかね…………)
 記憶の中のあかねの笑顔が深い藍色の空に浮かぶ。それがいつしか困ったような表情になり、泣き顔へと変わっていって。
(乱馬…………乱馬……、助けて…………!!)
 幾筋もの涙を流すあかねに手を差し伸べようとするものの、当然それは叶わない。
 あかね。何があった、あかね────。
 ふと自分の手足が震えていることに気が付いた。ぎゅっと力を入れ止めてみようとしても、がくがくと震える体はどうにもならない。そりゃこの寒さだ。こんな所でじっとしていたら冷えるのだって当然だろう。だけど。
 おれは心当たりがあり過ぎる本当の理由を敢えて考えないようにしながら、吸い込まれるようにある場所へと足を運ぶ。
「あの……」
「はい、どうされましたか」
「今日、大学生くらいの女の子で何か事故とか事件の一報ってありますか?」
 そこは駅に隣接する小さな交番だった。他にも道を尋ねる者。財布を落としたから金がないと相談する者。壁沿いに置いてある粗末な丸椅子は二つとも埋まっている。
「特にそういった連絡は来てないですねえ」
 パラパラと資料を捲りながら中年の男性が答える、その声は特に心配するでもなくいかにも事務的といった感じでおれの感情を逆撫でする。
「あの、もしかしたらもう少し若く見えるかも。髪が短めで、東京の練馬からここまで来る沿線で」
「あのねえ、お兄さん。まだ夜の七時でしょ? 大学生だったら特に心配するような時間でもないんじゃないの?」
「でも、」
「とにかくそういう連絡は入ってないから。わかった?」
 ぞんざいな物言いにカチンときて返事をする気にもなれなかった。そのまま乱暴に椅子から立ち上がり、無言で交番を去る。
 まだ夜の七時だと? そんなの言われなくてもわかってる。わかっているが、今日のあかねは事情が違う。っつーかあいつにあかねの何がわかんだよ。あいつはあかねを見たことあんのか!? 言っとくけどあかねはそんじょそこらにいる普通の女じゃねえ。余計なことにすぐ首を突っ込むお節介のじゃじゃ馬で、素直じゃねえし、手の早い乱暴者だ。でもな、何より一番違うのはその見た目で。正直、あかねはかわいい。十人いたら十人口を揃えて言うほど、パッと目を引くかわいさだ。それは大学生になってからますます磨きをかけるように、おれの欲目抜きでも断言できる。だから当然、他の男の目にも留まりやすいわけで。
 さっきから何度も捻じ伏せてきた不安が頭を過ぎる。
 まさか。まさかな。こんな早い時間帯からまさか。いや、でもわかんねーぞ。そんなことに時間もクソもあるもんか。大体、常識が通じねーからこそそういう事件は起こるもので。
 理性の無い相手ほど恐ろしいものはねえ。それはどんなに腕っぷしが強かろうとも、目的のためなら手段を選ばない獣の前では無力になる。
(あかね…………)
 考えまい。考えまいとするほど、最悪の想像ばかりが頭を埋め尽くしていく。
 どうして弱気になった時、人は考えたくないことばかりに思考を乗っ取られてしまうのだろう。そんな最低なこと、早々あるわけない。ましてやあかねだぞ? あいつだって格闘をやってるんだ。そんなこと、あるはずない。そう思うのについ先ほど自身が突きつけた非常な現実が、女一人の力など卑劣を前にした時にはなんの力も持たないと囁き掛けてくる。
 冗談じゃねえ。
 そう。この現実は冗談じゃない。
 理由なく連絡が取れないこと。それは坂道を転がるようにおれを不安に駆り立てる。
 苦しい。なんだこれ、ムカつき過ぎて吐きそうだ。
 何度も何度も楽観的であろうとした。でも無理だった。一度振り切ってしまった不安の針は悪い方へ悪い方へとおれの妄想を膨らませていく。
 あれから何度もあかねの携帯に電話した。が、それが良くなかったのか三度目以降は二回コール音が鳴るとすぐに留守番電話に転送されてしまう始末。これではあかねが意図的におれへ連絡を取ろうとしない限り、着信に気付くはずもない。
 焦る気持ちはおれを空回りさせる。いてもたってもいられなくなり、駅周辺のコンビニを回ったり、いつも二人で買い出しに行くスーパーを隈なく探したり。そうしているうち、もしかしたら今度こそ駅にいるかもしれないと思ってまた戻っては打ちのめされるの繰り返しだ。
 警察はあてにならねえ。少なくとも深夜零時、もしくはそれ以上時間が経たなければ真剣に取り合ってくれることはないだろう。が、それは逆に最悪の状況を意味するわけで。
 背中に冷たいものが走る。嘘だろう、真冬の二月だぞ? こんな時期に立ってるだけで汗をかくなんて、そんなのどう考えても普通じゃねえ。
 息が乱れる。心臓が痛い。服の上から胸を掴んでもその痛みが治まることはなく、この寒空だというのにおれはコートを脱ぎ捨てたい衝動に駆られながらあかねの気配に神経を巡らす。
「あかね……っ、あかね…………っ!」
 いつの間にか声に出して名前を呼んでいた。名前を呼んだら今度は目の奥が熱くなった。
 握りしめた携帯を確認する。手の中で温められたそれはべとりと汗ばみ、青白く光る画面は無情にも着信を記してはいない。
「一体どうしちまったんだよ……」
 いっそこのまま電車に飛び乗って家まで行こうか? しかし、ここで実家まで戻れば今度は帰りの足がない。それはそれで万が一何かがあった時、ひどく後悔する気がした。
 結局おれはどうすることも出来ないままあちこちを彷徨い、再び自分のアパートの傍まで帰って来ていたことに気付く。
 どうしよう。一度家に戻り、書き置きでも残しておこうか。そうすればあかねがこの部屋に来たらすぐおれの元まで連絡をくれるはずだ。……よし、そうしよう。それがいいに違いない。
 おれはポケットから鍵を取り出し、玄関の扉を開ける。当然ながら中は真っ暗で、もしかしたら先に帰って待ってるんじゃないかという米粒ほどの期待も打ち砕かれた。
 時刻は既に八時を半分ほど回っている。おれはコートを脱がず手も洗わないまま、そこらにあったメモと鉛筆を掴んだ。えーっと、なんて書きゃいいんだ? “あかね、連絡待つ”とか? これじゃあ電報か。ならばもっと“心配してる。とにかく早く連絡くれ”とか? いや、だけど……。
 書いては消し、書いては捨てる。これは何も文章だけではなく、文字を書こうにも手の感覚がなくて真っ直ぐ線が引けない事情もあった。
 震える肘をもう片方の手で押さえ、手首に体重をかけるようにして一文字ずつ鉛筆を走らせる。そうしてやっと書き終えた「これを見たら連絡しろ」というメモを机に残し、もう一度靴を履こうとした時だった。
 ごそごそと、でも確かに玄関の前で人の気配がする。チャイムが鳴るのとおれがドアを開けるのはほぼ同時か、もしかしたらおれのほうが早かったかもしれない。その扉の向こうには、目を丸くしたあかねの姿───
「び……っ、くりしたぁ……!」
「おまえっ、なんで……!」
 思わず怒鳴りそうになり、ハッと口を噤む。そこで目にしたのは、明らかにいつものあかねとは違う格好で。
 冷たい風に吹かれ、パサパサに跳ねた髪の毛。スカートの裾は土で汚れ、膝には地面に付いたような茶色いシミができている。それだけじゃない。あかねは気付いていないのだろうが、背中や肩、尻にまで、無数にくっついているのは割れた落ち葉の欠片……。
「あ、あの、遅くなっちゃってごめんなさい……」
 絞り出すようにあかねが呟く。ぎゅっと鞄の取っ手を握るその指先は、爪の間にまで土が入り込んでいた。
 ひとまずあかねを玄関の三和土に招入れ、そっと手を取る。それは氷のように冷たくて。
「…………おめー、手袋は?」
「え?」
「手袋。こんなさみーのにどーしたんだよ」
「あ……、え……っと、忘れてきちゃって」
「……」
 そんなわけない。ふわふわのモヘアに小さなリボンがあしらわれたクリーム色の手袋はあかねのお気に入りで、このクソ寒い日にそれを忘れるわけはなかった。
「…………あかね。落ち葉が付いてる……」
「え……」
「肩にも、背中にも…………頭にも」
「や、やだ…………、うっかりしちゃって恥ずかしい……」
「そ、その……、きっ、木登りでもしてきたのかよ? なんてな、わはは」
「う、うんっ、わかる? 実はそうなのっ」
 ははは……とお互いぎこちなく笑う。が、当然あかねの言葉を信じているわけなどない。木登り?この寒い日に大学生の女が木に登る? あり得ねえ。そんなの公園で子どもが木に靴を引っ掛けたと泣いてるところにでも遭遇しねえ限り、考えられないことだった。逆に言えば、あかねのこの下手くそな嘘がおれの嫌な予感を一気に色濃いものへと変える。
 はは、は……と沈黙を通り抜けるだけの笑いはそのまま白い壁に吸い込まれていった。再び二人の間に気まずい静寂が訪れる。
「……その格好」
「え……?」
「………………まるで土の上にでも転がったみてーだな」
 自分でもなんて残酷なことを言うのだとおののいた。が、この言葉にあかねは下を向き、目を逸らす。おれから目を逸らす。決しておれの目を見ようとしない。いつもは綺麗に整えられた髪には無数の埃や落ち葉の破片が入り混じり、どう考えても普通ではなかった。
 頼む、あかね。
 頼むから否定してくれ。「そんなんじゃない」と。
 じゃないとおれ、痛くてどうにかなっちまう。
「……、」
「あの……乱馬?」
「……………………があった?」
「え……?」
「なにがあった? あかね……」
「え……、あの…………」
「ぜってー怒らねーから……だから正直に答えて……?」
「……っ、」
「あかね…………一体なにがあった?」
 ああ、サイレンがうるせえなあ。それに加えてなにやら太鼓みてーな爆音が耳障りだ。そう思った時、それらが全て自分の心臓の音だと気付く。また一筋、背中に汗が伝った。
「あ、あの、ね、乱馬……」
「……」
 ごくりと飲み込んだはずの唾が喉を通っていかない。口の中は既にカラカラで、喉が張り付きヒュウッと間抜けな音を立てる。
「あ、たし、その…………」
 そこまで言った時だった。不意にあかねの瞳から透明な涙の粒が零れ落ちる。
「あ、あかねっ!?」
「ごめ……っ、ごめんなさ……っ! あ、あたし……っ」
 一度決壊した感情はおさまることを知らない。次から次へとあかねの頬を幾筋もの涙が濡らし、顎に伝ったそれがぱたり、ぱたりと玄関の三和土に染みを作る。
 ただ「ごめんなさい」を繰り返すだけのあかね。顔を拭うその手はやっぱり土で汚れていて、おれは脳天を硬い鈍器で殴られたような。それでいて冷静であろうとする、未だかつて感じたことのない揺らぎを覚えた。
「ど、どっか怪我は?」
 無言であかねが首を振る。
「他には? 腹がいて―とか、どっか体調がわりーとか、」
 再びあかねが首を横に振った。
「じゃ、じゃあ…………」
 ゴクリと飲み込んだのは唾か、それとも言葉に出来ない感情か。
「どっか…………どっか、いてーとこあるか?」
 その問いにあかねが泣きながら固まる。そして暫く考えた後、とんと小さく自分の左胸を押さえた。それは心臓の真上の位置で。
 心が痛い。
 あかねの仕草が、声にならない思いを物語っていた。

 ────……………………嘘、だろう?



 おれは口先だけをなんとか動かし、そのまま声を振り絞る。それは空気が漏れたような声だった。

「…………警察……………………。警察行こう、あかね」
 己が口にした警察という言葉。その途端、全ての色がおれの視界から消えてなくなる。
 なにもない。白と黒の……飲み込まれそうな闇の中でただ一人、あかねと向かい合っているような感覚だ。
 怯えた目であかねがおれに聞き返す、その瞳は闇の如く暗い。
「け、警察…………?」
「大丈夫だから……何も心配することねーから」
「で、でも…………」
「あかねは心配するな。おめーは何も悪くねえ」
「ううん……っ! ううん、違うの、全部あたしが……っ、あたしが悪……っ、」
「バカやろうっ! あかねが悪いわけねーだろうがっ!」
「だ、だって……! あたしがもっと、し、しっかりしてれば……っ」
 しっかりってなんだよ。あかねがもっとしっかりしてればこんな事にはならなかったって言いてえのか!? そんなわけあるもんか。突然の不幸にしっかりもクソもあるはずねえ。ただこうして命だけでも無事におれのもとへ帰って来てくれたこと。それに対する安堵を覚えた瞬間、激しい怒りが全身を駆け巡る。
 怒り? そんな言葉じゃ生ぬりい。殴って蹴って血反吐を吐いて許しを乞う相手を踏み付ける自分を想像してもなお晴れることのない無念さに、皮一枚ずつ剥いで痛みを与えていく残酷な欲望だけがおれの両足を立たせていた。
「いいかっ!? おれが悪くねえっつったら悪くねえっ!」
「乱馬……、」
「たとえおめーに何があっても……っ、どんなことがあってもおれはあかねの……っ」
 味方だから。その言葉を口にしようとした途端、猛烈な痛みと圧がこみ上げてくる。
 泣いちゃダメだ。こんなとこで泣くんじゃねえ。
 泣きたいのはあかねのほうだ。だからおれが泣くことは許されない。
 だけど。だけど────!
「乱馬……?」
「……っ、」
 顔を見せられず無言であかねの体を抱き締める。ごめんな、あかね。ごめんな、ごめん。おれが会いたいなんて言ったから。おれが今日この家に呼んだから。こんなことならおれが会いに行けばよかったんだ。あかねがつらい思いをしてる中、おれはぬくぬくとこの部屋の中で待っていて。
 “つらい思い”。
 その具体的な想像をし、また強烈な吐き気が襲ってくる。
 握りしめた己の拳はぶるぶると、爪が食い込んで真っ白に変わっていた。
「ごめんね、乱馬。ごめん、ごめんね……っ」
「謝るなっ」
「で、でも……、あたし、乱馬に……」
「いーから謝るなっつってんだろっ!? わりーのは全部おれなんだからっ!」
「っ!? ううん、そんなことないっ! 乱馬は何も悪くないの、悪いのはあたしで」
「だからおめーは何も悪くねーんだよっ! これ以上何度も同じことを言わすんじゃねえっ!」
「乱馬、」
「いいか? よく聞けっ。おれはどんなことがあってもおめーの味方だっ。たとえ世界中がおめーをどんな目で見ようとも、おれの気持ちだけは変わらねえっ!」
「乱馬……、だけど」
「いーから聞けっ! 確かにあかねは辛かっただろうけど、でもおれも一緒だから……っ! おめーの痛みを全部分かち合うから」
「そんな……、そこまで、」
「だから一緒に警察行こう。心配すんな。おめーはただ黙ってればいいから」
「で、でも、なにもそこまで大袈裟にしなくても、」
「バカっ! こんなことに大袈裟もクソもねーだろっ!? もっと自分を大事にしろよっ!」
「っ、ご、ごめんなさい! あたし……、あたし、」

 ああ、おれがバカだ。なにあかねに怒鳴ってんだよ。これじゃあただの八つ当たりじゃねーか。
 もっと理性的でありたい。そうでなきゃいけない。
 にもかかわらず、頭の中は狂ったような感情が暴れ回る。
 憎い。憎い。
 おれも、世の中も、あかね以外の全てが憎くて憎くてたまらねえ。

「、わりい……っ、怒ってるわけじゃねーんだ。ただ自分に対してムカついてるだけで」
「なんで乱馬が自分を怒るの?」
「だってそうだろ!? 元はと言えば、おれがおめーに余計なことを……」
「ううんっ! ううん、そんなことないっ! あたしとっても嬉しかったから! だからそんなこと言わないで!」
「あかね……、」
「乱馬……」
「あかね…………おれを許してくれんのか……?」
「許すも何もないじゃない……あたし、乱馬に感謝しかしてないよ?」
「っ、あかね…………!」
 
 神様。
 ちくしょう、神様。
 なんでだよ。なんであかねなんだよ。
 そんなに罪を負わせてえならおれ一人で充分じゃねえか。なんでよりによってあかねなんだよ。
 抱きしめた頭からは汗と、そして乾いた土の香りがした。
 神様。もしも願いがひとつだけ叶うとしたら、今日のこの記憶を全部抹消してください。
 どうしてもダメならせめてあかねの記憶だけでも、どうか、どうか。
 おれが全部負うから、どうかあかねだけは救ってやってください。
 厚手のウールに指が食い込むほど強くあかねを抱き締める。ごめん。痛いよな。でもこの腕の中にあかねがいることを実感するまで、あともう少しだけこのままで──。


 
 それからどれだけそうしていただろう。
 溢れ出しそうになった涙を寸でのところでこらえる。こうしてはいられない。とてつもなく辛いことだが、時間は早ければ早いほどいいに決まっている。おれは心を鬼にしてあかねの体を自分から引き剥がすと、そのままあかねの手を取り玄関の扉に手を掛ける。
「…………行こう、あかね」
「い、行くってどこに?」
「決まってんだろ? 警察だよ」
「け、警察って……、」
 途端にあかねの足が強張った。気持ちがわかるだけにおれはまた泣きたくなる。
 でもダメだ。どんなにあかねが拒もうとも、これだけは有耶無耶に出来ることじゃない。
「あかね。落ち着いて聞いてくれ」
 おれは出来るだけ平常心を装った声を作り、あかねと視線の高さを合わせる。
「今はまだ辛いと思う……けどさっきも言った通り、それはおれも一緒だから」
「……、」
「おめーは何も失ってねえ。それはおれが一番わかってる」
「っ、ううん! あたし、あんなに大事にしてたのに、あたしがぼんやりしてたから……!」
「だからおめーは何も悪くねえんだってば」
 
 ああ、くそっ。そんなに自分を責めるなよ。
 守ってやれなかった。
 助けてやれなかった。
 あかねが一番つらい時、それを救ってやれなかった自分が無力に思えて情けねえ。
 強さってなんだ。
 格闘ってなんだ。
 大事なものも守れねえ拳なら、いっそ砕けてなくなっちまったほうがマシなのに……!

「もう……無理だと思う…………」
 ぽつりとあかねが呟いた。その言葉におれの心臓はギクリと跳ねる。
「む、無理って…………」
 震えるな。頼むからおれの声、震えるんじゃねえ。
「……乱馬の気持ちは嬉しいけど。けど、もう無理よ…………」
「む、無理って……」
「……」
「なんでそんなこと言うんだよっ!? なあ、あかね!」
「だって! だってあたし、本当に失くしちゃったんだもん!」
「何をだよっ!?」
「だ、だから大事な、」
「じゃあおれのことなんかもうどうでもいいのかっ!? もうおれのことなんか嫌いになっちまったっつーのか!?」
「誰もそんなこと言ってないじゃない! なんでそんなこと言うの!?」
「だってそうだろ!? おれ、おめーのこと守ってやれなかった……っ、あかねがつらい思いしてんのに、おれ、一人で部屋にいて……、おれ……っ!」
「そ、そんなの仕方ないわよ。そりゃあたしだって悔しいけど、こればかりはどうしようもなくて」
「バカやろうっ! こんなことにどうしようもねえなんてあるわけねーだろっ!?」
「っ、そうよね……。あたしがもっとしっかりしてれば、」
「だからっ! そんなんじゃねえんだってば!!」
 
 一体どうしたら伝わる?
 おれがあかねを責めるつもりなんてこれっぽっちもねえこと。
 おれの気持ちは一ミリもかわってねえこと。
 この先、何があってもあかねのことを全力で守っていくこと。
 これ以上、あかねを傷付けるやつは何人たりともおれが許さねえこと……。
 ああ、ダメだ。何度目かの波をやり過ごしたはずなのに、とてつもない痛みが鼻の奥から瞼にかけて突き抜ける。
 ぼろりと音が聞こえそうなほど、大きな雫が目から零れ落ちた。あかねによく似合うウールのコート。その表面をぴょんと跳ね、やがて丸く染みになっていく。
 こうして痛みは刻まれていくのだろうか。たとえ涙が乾いても心の傷は癒えない。与えられた恐怖が消えることはない。
 それはおれの。男であるおれが、これから一生背負っていかなきゃならねえ十字架でもあった。

「あかね…………。こんなことがあったから言うわけじゃねえぞ」
「な、に……?」

 おれの。
 おれの気持ちが伝わるように、全身全霊が愛という感情で包まれる。
 神様。頼む。
 どうかあかねにだけ伝わりますように──……!

「……好きだ…………おれはあかねが好きだ…………」
「ら、乱馬?」
「いーから黙って聞けっ。おれはおめーが好きだ。あかねさえいれば何もいらねえ。それはこの先もずっと変わらねえ」
「そんな……、そこまで……」
「だから一人で抱え込むな。泣きたい時はおれに言え。守ってやれなかったふがいねえおれだけど、この先おめーの人生おれに守らせてくれ……っ」
「……嬉しい…………。あたし、その言葉だけでもう十分だよ」
「あかね…………っ」
 何度目になるかもわからない抱擁。それでもさっきまでとは違う、あかねのほうからおれを包み込むようなあたたかさにまた一つ涙が零れた。それをあかねに知られることのないよう、コートの袖でそっと拭う。
 おれの胸の前で「はあ……」とあかねが息を吐いた。ようやく少しだけ安心したのだろうか。幼い子どもが親に甘えるように、長い睫毛を伏せゆっくりと唇を動かす。
「あたしね……、今日は最低最悪な一日だと思ってた……」
「……」
 うんって。相槌を打ってやりてえ言葉は声にならない。
「ここに来るまでずっと泣きたい気持ちでね。もう乱馬の顔、見れないかもって思ってたの……」
「バ……っ!、なに言って、」
「でもね、乱馬が怒ってないって言ってくれたから」
「あ、あたりめーだろっ!?」
「こんなあたし、本当は呆れられちゃってもおかしくないのにね」
「バカやろうっ! おれがそんなつまらねえ男とでも思ってんのかよっ!?」
「ううん……。今はもうそんな風に思ってない……」
「あかね…………」
 抱きしめる力が一瞬強くなった気がした。そして胸を押し返され、僅かな隙間からあかねが顔を上げる。
 ああ。おれ、この顔知ってる。あかねがキスをねだる時、いつも無言で甘えるあの表情だ。
 でも今日は、その瞳の奥にもっと深い感情を覚える。
「乱馬……」
 与えられない温もりに焦れたのか、あかねがおれの名前を呼ぶ。
 触れたい。
 触れたい。
 でも今触れてしまったら、おれの中で複雑に絡まり合った感情が溢れてとんでもないことになってしまう気がした。
 あかねを傷付ける。それだけは避けなければいけない。なんとしても。
「……やっぱり、本当は怒ってる…………?」
「……っ、」
 んなわけねーだろっ!? 
 今度こそあかねの頭を掴み、口付けをする。触れた唇はかさりと冬の香りがして、一度重ねたそこを何度も何度も自分の唇で上書きした。
「ん……、ふ……、ぅ、」
 苦しいんだろうか。酸素を求めるように身動ぎするのを感じ、腕の力を緩める。今日は。今日だけは強引に力づくで抑え込むような真似をしたくなかった。
「あの、ね、乱馬……」
「なに……」
「聞き飽きたって思うかもしれないけど、今日は本当にごめんなさい」
「……」
「でもあたし、ほんの少しだけ嬉しかった……」
「っ、なんで……!」
「だって」
 再びあかねの腕がおれの背中に回される。
「あんなにまっすぐ乱馬が気持ちを伝えてくれて。最悪な一日だったけど……それでもあたし、幸せだなって……」
「あかね……」

 …………なんでだよ。なんでこんなことになっちまったんだよ。
 なんの罪もねえあかねが一人でつらい思い全部背負い込んで、それでも懸命に前を向こうとしてんのにおれだけが囚われている。

「……あかね。おまえ、その…………」
「なぁに?」
 そんな無理に笑ってみせんなよ。おれのほうが泣きたくなるだろ!?
「だから、えと……」
「乱馬?」
「その、か、から……だ、のほうは、大丈夫なのか……?」
 ぐっと喉の奥に鉛がつかえたような気がした。
 体。
 なんて生々しい響きなんだろう。でも聞かないわけにはいかない。
 すると意外にもあかねが明るい声を出す。
「うん。体は大丈夫! ほら、あたし体力には自信があるし」
「な……っ、」
 た、体力に自信があるだと!? それって一体どーゆう意味だ!?
 頭を過ぎるのは身の毛もよだつ受け入れ難い想像で、慌てて首を左右に振る。
「おめーなぁっ、もう少し大事にしろよっ!」
「なによっ、大事にしてたのに失くしちゃったものは仕方ないじゃないっ!」
 そうか。そうだよな。あかねだってこうでも強がってねーとやってられないのだろう。それなのにおれってやつは何もわかっちゃいねえ。
 するとあかねがおれを宥めるように言う。
「でもね、警察は……行っても無駄だと思う」
「…………なんで?」
「だって……。実はあたしももう行ってきたの」
 ……なんということだ。おれが一人で駆けずり回ってる間にあかねは自ら傷心の体を引き摺り、警察まで立ち寄ったというのか。
「そ、それで!? 警察はなんだって!?」
「うん。それが…………」
 どうした? 急にあかねが目を伏せ、言いづらそうに口籠る。
 確か、こういった性的犯罪には同性の婦人警官が対応してくれると聞いたが、場合によっては例外もあるらしい。まさか、あかねも例外に──
「……今回の件は諦めたほうがいいって」
「な……っ!」
「今さらもう無理だろうって。それより、また新しいやつを──」
「ふ……っ、ざけんな!!」
 何が無理だ。何が諦めろだ。ふざけんなバカやろうっ!
 ましてや新しいやつをだと!? それってあれか!? 恋人であるおれの顔を見づらくなったなら新しい彼氏を作って心機一転やり直せとでも言うつもりだろうか!?
 ちくしょうっ、世も世なら警察も警察だ。もはや信じられるものなんてなにもない。そう。あかねの存在を除いては。
「で? おめーはなんて言って帰ってきたんだよ!?」
「わかりましたって……」
「はあっ!? わかったじゃねーよ! そこはもっと食い下がれよっ!」
「だ、だって仕方ないじゃないっ! 自分でももう無理だろうなって薄々気付いてたから」
「バカっ! それでも諦めちまったらそこで終わりだろ!?」
「そ、そうだけど……っ」
 しまった。またあかねの目の縁が赤く潤んでいく。違う、違うんだ。そうじゃなくって。責めてえわけじゃなくって、ただ許せねーだけなんだ。こんなにもあかねを悲しませる全てのことが。
「ごめんね……」
「…………いや、」
 ぐずっと鼻が鳴りそうになる。べつに泣いてるわけじゃねーぞ。ただ寒くて鼻水が出るだけだ。そういうことにしといてくれ。
 その願いが届いたのか、あかねが話題を切り替える。
「ところで乱馬、お夕飯ってもう食べた?」
「へ? ゆ、夕飯っ!? ってまだ、だけど……」
「ほんと? よかった! 実はあたしもまだなの」
 だろうな。そりゃそうだろうとも。
 まさか警察でかつ丼を食ってきたってわけではあるまい。あれは取調室で犯人に出されるものだし、その前にそこであかねがガツガツかつ丼を食ってたらおれは少なからず驚きだ。
「お、おめー、腹減ってんの?」
「うん。もうお腹ぺこぺこ!」
 そうか。ってかこんな時でも腹は減るものなのか。正直おれは米一粒だって喉を通る気はしねえ。しねえが、あかねがこうして明るく振る舞う以上、おれだけが悲しみを前面に押し出すわけにもいくまい。
「そ、そっか。じゃあなんか食うか? あ、いやでもその前にやっぱりもう一度警察に……」
「警察はもういいわよ。それよりあたし、しっかりお肉が食べたいな」
「に、肉っ!?」
「あ、なによバカにして。どうせ色気がないって言いたいんでしょ。でもしょうがないじゃない。今日は体力消耗してるんだもの」
「体力…………消耗…………」
 ……まずい。なんか吐き気がしてきた。頭がガンガンする。どうしよう。おれがしっかりしなくちゃなんねーのに。
「乱馬?」
「……わりい、あかね。実はおれ、あんまり腹が減らなくて……」
「そうなの? めずらしいわね、あんたがそんな風になるなんて」
「わりい…………」
「やだ。そんな謝らないで」
 大丈夫? とあかねがおれの顔を覗き込む。ああクソ、やっぱかわいいな。このかわいさが時に罪となるなんて……そこまで考え、また新たな痛みが全身を駆け抜けた。
 と、突然あかねが小さく笑う。なんだ? 恥ずかしそうにころころ笑うさまは、つい数時間前までの悪夢などまるでなかったかのようだ。
「なんだよ」
「ううん、べつになんでもないの。ただ……」
 ただ?
「今夜は、その……そういうことは無理かなって思って」
 自分で言っておきながら、「きゃあっ」とおれの胸に顔を隠す。
「ご、誤解しないでね!? べつに期待してたわけじゃなくて、たださっき乱馬があんな風に言ってくれたから、その、ちょっと言ってみただけ!」
 ……なんという殺し文句だ。
 もちろん、普段のおれならば一も二もなくベッドに押し倒し、あかねの欲求に応えただろう。でも今日は事情が違う。なんせあかねの体はひどく傷付いている。そう、おそろしく体力を消耗するほどに。にもかかわらず、まだ今夜おれの相手をするだと? 頼む、あかね。お願いだからもっと自分を大事にしてくれ。
 いよいよおれは眩暈がしてくる。はたしておれが引き摺りやすいのか? いやいや、そんなわけはないはずだ。あかねの性格を考えろ。きっとおれを気遣い、わざと気丈に振る舞っているに違いない。その優しさ、強さにおれの視界がまた涙で歪む。
「や、やだっ!? 乱馬、大丈夫!?」
「え……?」
「どうして泣いてるの!?」
「え、あれ……、おれ、泣いて……」
「ごめ……、ごめんなさいっ! あたしが無神経なこと言っちゃったから」
「ちが……っ」

 違うんだ。そうじゃなくって。
 ただ悔しいだけなんだ。
 あかねを守れなかったこと。
 あかねを一人にしちまったこと。
 後悔なんてそんな言葉じゃ足りねえ。
 拭っても拭ってもやって来る悔恨は、涙となっておれの頬を激しく濡らす。
 いつの間にかあかねもまた泣いていた。
 ああ、ごめん。おれが泣いちまったから。
 ごめんな、あかね。ごめん。ごめん。
 あかねがおれの頭を抱き寄せる。
 ごめんな、あかね。こんな情けねえ許婚でごめん……。
 
「乱馬、本当にごめんね」
「……、」

 言葉の代わりに辛うじて首を横に振る。
 また一つ、おれの目から涙が零れた。

「そりゃあたしもわざとじゃなかったんだけど……」

 あたりめーだ。わざとそんなつらい思いをするバカがどこにいる。っつーか、わざとできるならそれはもう犯罪じゃなく合意の上だ。

「でもね、気付いた時には落としちゃってたのよ」

 そうだよな。気付いた時には落としちゃ………………ん?

「おかしいわよね。家を出る時には確かにくっついてたはずなのに、駅に着いたらどこにも見当たらなくて」



 …………えーっと。
 ……………………ちょっと待て。一体なんの話だ?


「あの……、あかね?」
「なぁに?」
「落としちゃったって、それっていったい……」
「だからキーホルダーよ、鍵のキーホルダー。さっきから言ってるじゃない」
「キ……っ!?」

 き い ほ る だ あ だとっ!?
 おれはキーホルダーという名を初めて耳にしたかの如く、一語一句口の形を大きく広げて聞き返す。
 
「キ、キーホルダーって、あの、」
「うん……前に乱馬があたしにくれたこの家の鍵があったでしょ。あれに付いてたキーホルダー」
「っ……!!」
「駅でカードを取り出そうと思ったらやけにポケットが軽いことに気が付いて。それから慌ててもと来た道を戻って探し回ったんだけどどこにも見つからなくって……ってちょっと、聞いてる?」
「キーホルダー…………」
「うん。その……ごめんね? せっかく乱馬が買ってくれたのに」
「キー…………」
「もっとあたしがしっかりしてればこんな事にはならなかったんだけど……」
「キーホルダー……あかねじゃなくってキーホルダー……」
「本当にごめんなさい……って、ちょ、ちょっと!? ねえ、乱馬!?」
「キー……ホ…ル………………」
 
 がくんと足の力が抜ける。
 空間が歪む。
 あかねの顔がぐにゃりと大きくひん曲がり、それから、それから……。
 どさりと耳の奥に鈍い音がする。頬に冷たい感触が走り、それが玄関の三和土だと気付いたのを最後におれは全ての意識を手放していた。
 
 
 *
 
「……う…………、」
「あ、気が付いた?」
「……………………あ、かね……? おれ、一体……」
「あのね。乱馬、あれから玄関で倒れて気を失っちゃってたのよ。なんとかベッドまで運んだんだけど、病院に連れていこうか迷っちゃって……」
「おめー…………、その格好…………」
「ごめんね。悪いと思ったんだけど、話し掛けても何の反応もないし……。でもよく寝てるみたいだったから、とりあえず先にお風呂だけ借りちゃった」
 そう。心配そうにおれの顔を覗き込むあかねの格好は、いつもおれが着ているスウェットに下は膝までのハーフパンツを履いていて。二月にしては寒々しい剥き出しの足が、蛍光灯の下で青白く光って見える。
「ご、ごめんね、勝手にお風呂借りて。あのままじゃ、あたしも病院行きづらくて」
「いや、それはいーけど……」
 そう。風呂だとか着替えだとか、そんなことはどうでもいい。
 大事なことはもっと他にあって。
「大丈夫? 今から病院行く? それとも何かご飯を──」
「てめー、…………責任とれよな」
 自分でも信じられねーほど低い声が出た。きっと今なら自分が犯罪者になりかねない、低い低い抑揚のない声。
 風呂上がりでさっぱりしたあかねは少女のように目を丸くしながら、あっさりおれの下に組み敷かれている。
「散々人に心配させやがって……!」
「ね、ねえ、いったいどうしちゃったの!?」
「どうしちゃっただぁ!? それはおめーが一番わかってんだろーがっ」
「だ、だからそれは悪かったってば! ただ乱馬だって人の話を聞かないで勝手に」
「やかましいっ! あかねにおれの気持ちがわかってたまるかっ!」
「ご、ごめんねって、」
「いーや許さねえ。今日という今日は男の怖さってもんをとことん教えてやるぜ!」
「今日じゃなくたって教えるくせに!」
「バーカ、あんなの教えたうちに入んねーだろ!?」
 途端に慌てふためくあかねの着衣を毟り取る。なんたって今日のおれはジェットコースターのような感情の波に自身のコントロールも制御不能だ。腹が減っていた? そんなの、目の前のあかねが何よりのご馳走で。何も厭らしい意味じゃない。ただ、あかねで満たされたい。その一心に尽きる。
「あかね……っ、あかね……!」
「も…っ、そんないきなりは、いや………っ」
「なんでだよ!?」
 懇願するようにおれの手を止めるあかね。睨み付けるようにあかねの顔を見たおれは、一瞬生唾を飲みそうになって。
 
「だって…………今日はいっぱいこうしてたいんだもん」
 
 細い腕がおれの背中をゆっくり這っていく。それがどれだけ煽るのかもわかってねえで、その晩のおれ達は貪り合うように夜を明かした。
 
 
 
 *
 
 
「ん…………、」
「まだ寝てろよ。朝だから」
「…………乱馬は……? どこか出掛けるの……?」
 
 胸をシーツにつけたまま、あたしは頭だけを動かして恋人に問う。なんせ、昨晩……ううん。明け方まで続いた求愛の行為はいつになく濃厚で、指一本動かすのも億劫でたまらない。
 そんなあたしを余所に「大学の稽古行ってくる」と乱馬が上着を手に取る。
「稽古って……今日、日曜日よ?」
「体を鍛えんのに曜日なんて関係ねーじゃねえか」
「昨日までそんなこと言ってなかったのに」
「あれ? そうだったか? まあ、午前中で終わる予定だからよ」
「でも……」
「とにかく今日はおれが帰ってくるまで勝手に家から出んなよ!? わかったなっ!」
 
 やれやれ。昨日のことが相当堪えたらしい。とはいえもちろん全て乱馬の早とちりなのだが、その原因は他ならぬあたし自身にあるだけに、そこは大いに反省しなければならない。
 鍵のサムターンが回る音が響き、続けて「いいか!? 絶対出んじゃねーぞっ!」と同じ台詞が繰り返される。「はいはい」と返事をし、大きな。大きな溜め息を一つ落とした。
 
 
 なんせ昨日は偶然が重なった。家を出てすぐ公園で泣いている女の子を見つけ、その子が木に引っ掛けてしまったという靴を取るのに手を焼いた上に今度は両手に荷物を持ったおばあさんに遭遇して。きっと乱馬に知れたら「このお節介!」と一喝されるのを容易に想像しながら、それでも約束の時間にはぎりぎり間に合うと踏んでいた。その時までは。
 しかし、そうは問屋が卸さない。
 駅に着いたあたしを待っていたのは、妙に軽いコートのポケットという現実。
 待って待って、嘘でしょう!?
 いつもならばジャラリと手に当たる尖った感触がない。慌ててそれを取り出すも、手の中にあるのはどこにでもあるアパートの鍵だけで、丸い形の留め具は歪に楕円を描き、肝心のその先が見当たらない。
(どっかに落としてきたんだ……!)
 さっと顔色が変わる。
 待って待って、落ち着いて。とりあえず今来た道を戻って……と思うものの、今日は女の子を送り届けてついでに見知らぬおばあさんの家まで行った。その帰り道では野良猫に出会い、つい追い駆けて遊んでしまったのはここだけの話で。
 どうしよう。
 どうしよう。
 あれは乱馬があたしのために用意してくれた、大事な大事なキーホルダーなのに。
 落ち着いて。そうよ、落ち着いて地面を探せばきっとどこかに落ちてるはず。それでも見つからないのなら、もしかしたら木の枝のどこかに引っ掛かっているのかもしれない。ああ、それとも気付かないうちに猫が咥えて持っていったとか? そんなことになったらお手上げだ。
 冬の景色はどこも色が変わらない。
 茶色とベージュと、厚く雲が覆うグレーの世界。一見変わり映えのしない中、あたしは両手両足を使って落ち葉の中まで掻き分ける。
 ない。
 ない。
 どこにもない。
 なんで!? どうして!?
 泣きたくなるとはこのことか。
 約束の時間は疾うに過ぎている。でもそこで諦める気にはなれなかった。あんな小さな物だもの。日が暮れたらもっと見つかりにくくなるのはわかりきっている。そして何よりもこわいのが、誰かに持ち去られてしまうことだった。もちろん大人がそんなことをするとは思えない。が、もしも子どもだったら? きらきら光るラインストーンの散りばめられたキーホルダーに心動かされないとは限らない。しかし、そうなってしまったらそれは二度と自分の手元に戻ってこないことを意味していて。
 夕方になっても見つからなければ大人しく諦めよう。最初はそう思っていた。けれども元来負けず嫌いで根性だけは自信のあるあたしのこと。そう簡単に諦められるはずもなかった。
(どうしよう。もう一度乱馬に連絡した方がいいわよね)
 でもどうやって? 乱馬から貰った大事なキーホルダーを失くしちゃったと正直に打ち明ける?
 きっと乱馬は怒ったりしないだろう。もしかしたら「どんくせーな」くらいは言うかもしれない。けれどそんな時、絶対にあたしを責めないのが天の邪鬼な恋人で。
 笑いながら胸を痛める乱馬を想像し、ズキンと心臓が悲鳴を上げる。
 ……………………無理。こんなこと、乱馬には言えない。
 ううん。何よりあたしが諦めきれない。
 時間はまだ五時過ぎ。遅くなると言ってあるし、大学生なら心配をかけるような時間でもない。
 剥き出しになった耳は氷のように冷たくなっていた。それだけじゃない。髪も、頰も、土まみれになった指先も、かじかんで感覚は殆どない。それでもここでお気に入りの手袋をする気にはなれなかった。
 もう少し。
 もう少し。
 あとちょっとだけ。
 そうして時間が経てば経つほど、疚しい思いを抱えたあたしは乱馬に連絡しづらくなる。そしてもうひとつ。どちらかというとこちらのほうが切羽詰まった問題だったが、刻々と日が暮れる冬の町を携帯の明かりを頼りにして歩くあたしは、いつの間にか充電が一桁になっていることに気付くのが遅かった。
 結局、藁にもすがる思いで最寄り駅の交番に落とし物の有無を問い合わせるものの、当然ながら届けはなかった。それも仕方のないことだろう。自分だって道端にキーホルダーが落ちていようと、そこに肝心の鍵も何もついていなければただのガラクタと一緒の扱いだ。
(ごめんね…………ごめんね、乱馬……)
 何度も何度も心の中で詫びる。
 寒空の下、当てもなく何時間も寒空の下を歩き回った体は疲労困憊だった。それが電車に乗った途端あたたかい空気に包まれ、柔らかな布張りの座席で深い眠りに落ちてしまったのは無理もない話だろう。
 その後のことは言うまでもない。降りる駅で意識が浮上したのは奇跡とでも言うべきか、それでもぼんやりした頭のまま歩き慣れた乱馬のアパートまでの道を歩く。そこで何気なく手にした携帯のフラップを開き、表示された着信履歴におののいた。その数、なんと十四件。
 ど、どうしよう……! これは間違いなく怒ってる。
 焦る気持ちは空回りし、必死に動かしているはずの足はなかなかアパートには辿り着かない。それでもなんとかロックを解除し、玄関扉の前で呼吸を整える。
 今日は自分が悪い。なんせ約束の時間を六時間近く遅刻しているのだ。
 怒られる覚悟を決め、インターホンに指を置く。あたしが呼び鈴を鳴らすのとドアが開くのは、ほぼ同時だった───


(それにしても、昨日の乱馬って…………)
 思い出す度、ふふっと笑いがこみ上げてきてしまう。無論、乱馬にしてみたら笑い話でもなんでもないのだが、どうやったって可笑しいものは可笑しいし、もっと言えば嬉しいものは嬉しい。
 まるで呪文のように繰り返される「神様、どうか記憶を消して……」の寝言には思わず耳を疑ったが、それだけ衝撃的で恥ずかしいことを口走った自覚はあるのだろう。残念、あいにくそれをあっさり忘れてあげられるほどあたしは素直にできていないけれど、忘れたふりをするくらいの優しさは持ち合わせているつもりだ。
 主のいないシングルベッドはいつもよりもずっと余裕があり、体の下でいくつもシーツの波を描いている。それがまた、胸の深いところをきゅんと甘く疼かせた。
「バカね……乱馬以外にあたしが触れさせるわけないじゃない」
 万が一にもそうなった時には舌を噛み切ってでも拒否してやる自信がある。これは冗談ではなく百パーセント本気だ。
 でもね、でも。

「……あたしも。何があっても乱馬のこと、大好きよ」

 既に温もりの無い枕にキスを落とし、再び目を瞑る。湿った汗の残り香は、明け方までの激しい行為を物語っていた。
 

 
 それからどのくらい経ったのだろう。厚いカーテンの向こうはぼんやりと飴色に光り、もう日が高いのがわかる。
「お風呂、入らなくっちゃ……」
 足元に落ちているスウェットを拾い、のろのろと頭から被る。そして顔を洗い、歯を磨き終えたところでガチャガチャと玄関の鍵が開く音がした。
「お、あかね。もう起きてたのか?」
「もうってお昼近いわよ。おかげでいっぱい寝ちゃった」
「まー、昨日は疲れきってたしな」
「……その原因の半分はあんたのくせに」
「バーカ。その原因を作ったのはどこのどいつだよ」
「そ、それはその、ごめんってば」
 ううっ、これを言われるとつらい。委縮するあたしの頭に落ちてくるゲンコツ……と思ったら、それはあたしの手の上にカシャンと落ちてきた。

「ほら。探しもんってこれだろ?」
「う……そ…………っ、」

 ……そう。そこにあったのは、昨日あれだけ探しても見つからなかった例のキーホルダーで。

「今朝、交番に問い合わせたら届いてるっつーからさ。確かそれで間違いねーよな?」
「う、うん……! でも一体どーして!? あんなに探して問い合わせても昨日はなかったのに」
「おめえなー。べつに落とし物拾ってすぐに届けるとは限らねーだろうが。もしかしたら帰宅途中に拾って翌朝届けるかもってちったあ頭を働かせろよ」
「そ、そうだけど、」
「とにかくいいか? 今度は失くすなよ。っつーか失くしてもいーけどあんな時間までムキになって探すんじゃねえ。わかったな!?」
「…………」
「返事!」
「はいっ」

 あたしはもう一度手の中のキーホルダーを見つめる。
 やっとあたしの元に戻ってきた、大事な大事なキーホルダー。
 それを届けてくれた許婚の顔は、耳も鼻の頭も、どこもかしこもほんのり赤く染まっていて。

「…………外。寒かったでしょ?」
「あー、すっげえ寒かった。晴れてるけど雪降りそうだなこりゃ」
「そう……」
「おめーは? 腹減ってねーか? それともどっか出掛けて」
「あたし、これからお風呂入るつもりなんだけど」
「そっか。んじゃ、湯船沸かして──」
「乱馬も、その…………一緒に入る?」

 こんなの、あたしらしくない。
 あたしらしくないんだけど。
 
「あ、あかね!? い、いいいい一緒って、あの、」
「寒いんでしょ? あの……背中、流してあげたいなぁって」
「さ、さみいっ! 入るっ! 今すぐ入るっ!!」
「あ、言っておくけどあたしは先に入って体洗うから待っててよね」
「なんでだよっ!?」
「じゃないと一緒に入らないもん」
「てめ……っ!、期待させるだけさせて卑怯だぞっ!?」
「あ、そういういうこと言うんだ。ふーん。じゃあやっぱり一人でのんびり入って──」
「だーっ! 待て待てっ!! わ、わかった! 先おめーが体洗ったら入っていいんだな!?」
「ちゃんとあたしがいいって言ってからよ」
「わかったっつーの」
「あ、それからあくまで一緒に入るだけだからね?」
「わかったわかった」
「絶対変なことはしちゃダメよ」
「しつけーなぁ! いーからさっさと入ろうぜっ!」
 

 ───さて。
 その後の“変なこと”をしない約束が守られたかどうかは置いといて。

 寒い寒い冬の日に湯船が冷めるほどゆっくりと。
 水音に任せ、二人の肌をあたため合った事実を知っているのは多分、忙しい神様だけに違いない。
 
 
 
 
 < END >
 
 
 
comment (6) @ 大学編⑬ 神様に願った夜(読切り)

   
推しの香水を作ってきた!(新宿FINCA)  | 先生にだって秘密はある ⑬過ちは戯れの始まり 

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2018/09/19 Wed 12:15:13
大好き・・・! : 憂すけ @-
何度だって言わせて頂きますよ。kohさんが書く乱あもkohさん自身も、あたしは大好きです。
その理由は今更言わなくてもお分かりだと思いますが…このお話しの様な二人を書けるkohさんがあたしは大好きなんです。オチ(←拍手の事をそう言うのはよせ)まで読んで、さらに強く想いました。
優しいなぁ、掛け値なしに、優しいなぁ。
乱馬も、あかねちゃんも、そしてkohさんも。

自転車ぶっ飛ばしてヘロヘロなあたしに癒しと涙を有難う。あ、でも途中から笑っちゃいました♡アンジャッシュのコントのような二人のやり取りが、最高ッス!! (^o^)/
2018/09/19 Wed 12:47:51 URL
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2018/09/19 Wed 21:05:05
Re: ありがとうございました!! : koh @-
m~コメント主様

今回もお付き合いいただきありがとうございます♡
キーホルダーを失くす、というのはMission Aを思いついた時に決めていて。あとはどのタイミングでどうやって?となんとなく考えていたのですが、ただ失くして「はい、見つかった」では面白くないなぁと。
世の中そこまで上手くいかないって言う意地悪も含めてのお話でした^^。
私の勝手な想像ですが、乱馬の心が壊れる時って自分じゃなくあかねちゃんの命にかかわる時と、もうひとつはあかねちゃんの貞操の危機なんじゃないかな、なんて思います。そしてそのあたりはあかねちゃん自身が一番自分に厳しいんじゃないかなって。
乱馬でも流石に取れたストーンのことまで気付くのは無理でしたね~笑。
この後、喧嘩の度にあかねちゃんがあの熱烈な告白を匂わせて乱馬がワタワタしてれば美味しいな^^。
(格闘チアリーディングではあんな歯の浮く台詞を連発できたんですもの。言える言える!)
2018/09/21 Fri 22:27:33 URL
Re: 大好き・・・! : koh @-
憂すけさん

ありがとうございます。
ここ最近、更新頻度が遅い代わりに一話ずつのボリュームがすごくって……。(私比)
読み返してみて「これで登場人物乱あの二人かよ!?」と我ながら呆れつつ、その時はどっぷり妄想に浸かって書いています。
そして言われてみれば後半は完全にアンジャッシュですね笑。お互い真剣でおふざけなどどこにもないのに、なぜだかかみ合わない……。
書いている時は映像を浮かべるというか、二人の会話をそのまま記録しているような感覚なのであまりわからないものの後で読み返してみて「なんじゃこりゃっ」と自分でも笑ってしまいました。
きっと書いてて楽しかったんでしょうね、うん笑。
しかしMission Aを書いた時にキーホルダーを失くす発想まで浮かんでいて早2年ちょい……。
ここまで長かったです汗。
2018/09/21 Fri 22:27:50 URL
Re: タイトルなし : koh @-
ひ~コメント主様

わーい、「大好き」ありがとうございます!
結局、私の中で乱あってこうなんです。
というより、自分も学生時代に大好きな人とこんな会話をしたなぁ……なんて(照)。
残念ながらその人との恋は終わってしまっても、きちんとさよならをするまでは絶対に他の人とというのは考えられない。ならば万が一の時は?なんて、言っても仕方のないことを延々話しては「絶対そうならないように気を付けよう!」と時間や道に気を付けたものです。(※不幸にもそういう経験についてフォーカスしたいわけではありません)
相手が大事だから自分を大事にしたい。相手が大事だから何よりも大事にしたい。それって特別でもなんでもなく、本当に好きだったら当然のこととして持つ感情なんじゃないかなって……。
そんな学生時代の頃を思いながら、想像だけで胸をシクシクさせつつ書いたお話。そしてキーホルダーについては2016年7月からずっと書きたかっただけに、ようやく形に出来てホッとしました^^。
2018/09/21 Fri 22:28:09 URL

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